家を売るしかないのでしょうか?申告期限まで残り2ヵ月半…「土地評価額約1.3億円」「96歳母の遺産」を巡り、50代三女一家が崩壊寸前に追い込まれたワケ【相続の専門家が解説】

家を売るしかないのでしょうか?申告期限まで残り2ヵ月半…「土地評価額約1.3億円」「96歳母の遺産」を巡り、50代三女一家が崩壊寸前に追い込まれたワケ【相続の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

相続税の申告期限まで残り2か月半──。96歳で亡くなった母親の遺産を巡り、50代女性の一家は深刻な対立に直面していました。遺言書はなく、姉たちは「現金で公平に分けてほしい」と主張。しかし、不動産はあっても預金はほとんどなく、法定相続分どおりに分けるには4,600万円もの現金が必要でした。家も家業も失いかねない状況のなか、相続を“争族”にしないために必要なこととは何か──。相続実務士・曽根惠子氏が、実例をもとに解説します。

法定相続という「数字」の罠

今回の相続財産を評価すると、総額は約1.4億円になります。

 

法定相続分(6分の1)で計算すると、姉2人にはそれぞれ約2,300万円、合計で約4,600万円を支払う必要がある計算です。

 

しかし、母親名義の預金はほとんどありません。

 

Мさんが用意できる金額は、姉2人にそれぞれ500万円ずつ。それで合意してもらえないかと提案しましたが、姉側からは「500万円程度では納得できない」という反応が返ってきました。

 

父親にもМさんにも、法定割合に相当する4,600万円もの現金はありません。

 

このままでは、「家を売る」以外に道がなくなってしまいます。

放置すれば待ち受ける「最悪のシナリオ」

もしこのまま合意できず、期限を過ぎて弁護士介入や調停に発展した場合、どうなるのでしょうか。

 

・無申告加算税や延滞税などのペナルティが発生する
 ・相続税評価(路線価)ではなく、実勢価格(時価)で争われる可能性がある
 ・土地価格が2億円を超え、支払い負担がさらに増大する
・現金を支払えなければ、不動産売却を命じられる可能性がある

 

つまり、三代続いた家業の拠点を失い、高齢の父親は住まいを失う危険があるのです。

 

さらに、今ここで安易に「共有」という形でまとめてしまえば、次に父親が亡くなった際、権利関係はさらに複雑化し、最終的には100%売却せざるを得なくなる可能性があります。

顧問税理士の提案:「土地を共有すれば?」

申告準備を担当している会社顧問の税理士からは、「土地を法定割合で共有してはどうか」という提案もあったそうです。

 

法定割合では、父親が2分の1、姉2人とМさんがそれぞれ6分の1ずつを所有する形になります。つまり、1つの不動産を4人で共有するという案です。

 

しかし、これは本当の意味で財産を分けたことにはなりません。

 

自宅と会社を維持したい父親とМさんに対し、姉2人は現金化を望んでいます。共有状態にすれば、再び対立が生じ、むしろ将来の争いの火種を残す結果になってしまいます。

私たちが提案する「解決のロードマップ」

父親が娘たちを説得できない今、必要なのは「家族の情」に訴えることではありません。

 

必要なのは、「客観的な事実」と「合理的な着地点」を示す第三者の介入です。

 

既存の税理士は「決まった数字の申告」はしてくれますが、揉めている家族の間に入って交渉することまではできません。

 

そこで、当社では以下のステップを提案しました。

 

① 相続実務士による「合理的な評価」の提示

専門家が「国のルール(路線価)」に基づいた適正な評価を資料化し、現状のままでは増税や紛争によって全員が不利益を受けるリスクを数値で示します。

② 資金調達の具体化(代償分割)

「現金がないから払えない」で終わらせるのではなく、自宅を担保にした融資や、法人を活用した資金確保(退職金など)によって、具体的な支払い方法を設計します。

③ 二次相続を見据えた「全体最適」

配偶者控除を活用し、「今は父親に集約することが最も税負担を抑えられる」ことを説明した上で、将来の公平な分配を見据えた遺言書作成まで提案します。

結論:相続は「準備」がなければ「争い」に勝てない

今回の事例が教えてくれるのは、「親の意思(口約束)」は、遺言書という形にしない限り、法的な権利の前では無力だということです。

 

相続は、放置すれば簡単に「争族」へと発展します。

 

育ての親である父親を困らせ、家業を失わせる危険があるなかで、姉たちを責めるだけでは何も解決しません。

 

「遺産分割協議書を作成するまでのプロセスこそが、相続の9割です。弁護士に持ち込まれる前に、専門家が介入して合意形成を図ることが重要です」

 

これが、Мさん一家の住まいと会社を守る、唯一にして最後のチャンスなのです。

 

もし皆様のご家庭でも、少しでも家族間に「温度差」を感じるのであれば、それは危機信号かもしれません。手遅れになる前に、一度専門家へ相談することをおすすめします。

相続実務士からのアドバイス

不動産の共有は、将来の紛争を先送りするだけの「禁じ手」です。

 

今回のケースでも共有案が出ていましたが、決しておすすめできません。

 

今の世代で、きちんと決着をつける勇気が何より重要です。

 

曽根 惠子
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®

株式会社夢相続 代表取締役

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

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