家計は楽になった、でも…
その後、訪れたのは、静かすぎる日々でした。長女からLINEは来ますが、ほとんどは一人暮らしをする美津子さんの安全確認をする定型文。
娘:「お母さん、変わりはないですか?」
美津子さん:「ありがとう。こちらは変わりないです」
その一往復で終了。ときどき、おまけ程度に孫たちの写真が添付されてきます。会わなければ、この程度のやりとりで終わってしまうのか――寂しさを感じていたある日、趣味のサークル仲間である友人の言葉に、はっとしました。
「まだお孫さんは小さいんでしょ? いいわね。うちはもう、みんな中学生と高校生。部活や友達が優先で、こっちが『おいで』って言っても、もう全然。お正月だけ“義理”で来て、お年玉だけはしっかりもらっていくけどね。孫が嬉しそうに来てくれる時期なんて、本当に一瞬だったわ」
気づかないふりをしていた後悔が、どっと押し寄せた瞬間でした。
「断らなくても、そのうち来なくなる。それなのに……」
確かに、金銭的・肉体的な負担は嘘ではありません。しかし、伝え方はいくらでもあったはずです。
――「お金が厳しいから、外食は減らしていい?」と相談すればよかった。
――「来てくれるのは嬉しいけど、午後の3時間だけにしてね」と体力を優先させてもらえばよかった。
孫たちはすぐに成長し、自分の世界を持って、自然と美津子さんから距離をとっていったはずです。「どうせいつかは来なくなる」その時まで、なぜ待てなかったのか。
家計は、孫に関連する支出が消えた分、以前より少しだけ余裕が見られるようになったといいます。ですが、美津子さんの心は晴れません。

