(※写真はイメージです/PIXTA)

「老後は好きなことをして生きたい」。退職金を“人生最後の自由なお金”として、旅行や趣味に使う人は少なくありません。しかしその選択は、老後資金とのバランスの上に成り立っています。思い切った支出が、数年後に重くのしかかることもあるのです。

「今しかないと思った」…退職後に選んだ“夫婦の夢” 

元会社員の浩司さん(仮名・65歳)と妻の真由美さん(仮名・63歳)は、昨年、長年の夢だった海外クルーズ旅行に参加しました。浩司さんは大手メーカーを定年退職。退職金は約2,000万円でした。

 

「ずっと忙しく働いてきましたから。“元気なうちに夫婦で世界を見たい”という気持ちが強かったんです」

 

夫妻が選んだのは、数ヵ国を巡る長期クルーズでした。客室は海側バルコニー付き。寄港地観光や追加オプションも含めると、総額は数百万円規模になりました。

 

「正直、高いとは思いました。でも、“今しかない”とも感じたんです」

 

出発前、子どもたちには「そんなに使って大丈夫?」と心配されたといいます。しかし浩司さんは、自信を持って答えていました。

 

「年金もあるし、家のローンも終わっている。何とかなると思っていました」

 

実際、当時の夫婦の家計には一定の余裕がありました。持ち家で住宅ローンは完済済み。退職金に加え、年金見込み額も夫婦で月24万円ほどありました。

 

「節約ばかりの人生だったので、“一度くらい贅沢してもいい”と思ったんですよね」

 

クルーズ旅行そのものは忘れられない体験になりました。

 

「船の上で夕日を見ながら、“来てよかったね”って何度も話しました」

 

ところが、帰国後、少しずつ現実が見え始めます。最初に違和感を覚えたのは、預金残高でした。

 

「思った以上に減っている感覚があったんです」

 

旅行代だけではありません。クルーズ中の追加費用、円安による現地支出、帰国後の生活費。さらに、退職後に加入した任意継続の健康保険料も想像以上に重かったといいます。

 

総務省『家計調査(2025年)』によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯の平均消費支出は月26万3,979円で、平均的に赤字です。

 

「“年金があるから大丈夫”という感覚が、かなり甘かったんだと思います」

 

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