親の遺産をアテにする子どもの姿
喜朗さんが指摘したように、資産5,000万円は、30代としては驚異的です。しかし、独身で一生を逃げ切るには決して十分とも言い切れません。
合理的思考を持つ直樹さんは、暴落やインフレへの恐怖があるからこそ、親の資産を頭の中で“前借り”し、それを「確定した未来のキャッシュフロー」と捉えたのでしょう。
しかし、親にとっては自分が苦労して築いたお金。喜朗さんと妻が余生を楽しむため、そして介護などに備えるために使ってよいお金です。
金融経済教育推進機構(J-FLEC)の「家計の金融行動に関する世論調査(2024年)」によると、遺産について、「老後の世話をしてくれるか、家業を継ぐか等に関わらず子どもに財産を残してやりたい」が29.9%で最も多くなっています(2人以上世帯の回答)。
親側が「老後の世話をしてもらうかもしれない。財産を子どもに残したい」と思っていても、先走って「親が死んだら」という前提で子どもが話せば、その気持ちがしぼむのも当然でしょう。
また、同調査で2番目に多かった回答は、「子どもはいるが、自分の人生を楽しみたいので、財産を使い切りたい」が17.5%で2位。子どもより自分たちの暮らしを優先したいと考える親も少なくありません。
親の財布と子どもの人生は別物
直樹さんの場合、30代という若さやFIREという特殊性はあるものの、「親の遺産をアテにする子ども」自体は、決して珍しくありません。
こうした場面では、「私たちの老後資金は、介護や医療で使い切るかもしれない。家も売って、よい老人ホームに入るかもしれないから、アテにするな」とはっきり伝えるのも一案です。子どもに期待を持たせないことが、結果的に彼らを自立させます。
まずはライフプランを共有すること。また、早めに公正証書遺言を作成して「何をどのように遺すか」を明確にしておくのもよいでしょう。
「一生働かない」という決断は自由ですが、その自由は親のお金の上に成り立つものではありません。親子であっても、親の財布と子どもの人生は別物。身勝手なシミュレーションで家族の絆が壊れることのないよう、早めの意思表示をすることが重要です。
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