(※写真はイメージです/PIXTA)

老後の生活は、夫婦だけで完結する前提で設計されることが多く、年金額や支出のバランスもその枠内で考えられがちです。しかし実際には、家族の事情によって同居が発生するなど、想定外の変化が起こることもあります。人数が増えることで家計や生活リズムは大きく変わり、これまで無理なく成り立っていた暮らしが揺らぐケースも少なくありません。

「このままで十分だった」夫婦2人の穏やかな日常

中村さん夫妻(仮名・70代)は、数年前に仕事を引退し、年金生活を送っていました。夫婦の年金収入は合わせて月24万円ほど。持ち家で住宅ローンもなく、大きな支出もない生活でした。

 

「特別なことはしていませんが、穏やかでした。朝起きて、食事をして、好きなことをして、また眠る。それだけで十分でした」

 

外食は月に数回、日用品の買い物も近所で済ませる。派手さはないものの、無理のない生活が続いていました。

 

総務省『家計調査(2025年)』によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯の平均消費支出は月26万3,979円です。中村さん夫婦は、それよりやや少ない水準で生活を維持していました。

 

そんな日常が変わったのは、長女の美咲さん(仮名・38歳)が、孫を連れて実家に戻ってきたことがきっかけでした。

 

「離婚することになって…しばらく置いてほしい」

 

突然の申し出でした。孫はまだ小学生。住まいをすぐに確保することは難しく、「一時的に」という前提で同居が始まりました。

 

「最初は、困ったときはお互い様だと思っていました。孫と一緒に暮らせるのも、どこかうれしかったんです」

 

しかし、その“少しの変化”は、思っていた以上に生活を揺るがしていきます。

 

食費は明らかに増えました。これまで夫婦2人分で済んでいた買い物が、4人分になりました。光熱費も上がり、洗濯や掃除の回数も増えました。

 

「数字以上に、生活のペースが変わりました。食事の時間も、家の中の音も、全部違うんです」

 

妻は、孫の世話を自然と引き受けるようになりました。学校の送り出しや食事の準備。長女は仕事を探しながら家にいる時間もありましたが、徐々に役割の偏りが生まれていきました。

 

「頼まれたわけではないんです。でも、やらないと回らない状況になっていました」

 

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