一体いくらかかるんだろう?90歳父の財産は現金1億円…相続税に恐怖した60代男性が打った「自分の相続対策」【相続の専門家が解説】

一体いくらかかるんだろう?90歳父の財産は現金1億円…相続税に恐怖した60代男性が打った「自分の相続対策」【相続の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

90歳の父親が保有する1億円超の現金。相続税の負担を見据え、対策を進めたいと考えたTさん(60代)でしたが、父親は一切耳を貸さず、「口を出すな」と強く拒絶します。こうした状況のなか、Tさんは「親の代での対策」から「自分の代での対策」へと発想を転換。生前贈与や生命保険に加え、不動産活用による評価圧縮、さらには遺言設計の見直しへと踏み込みました。なぜ今、不動産と借入が鍵になるのか。そして、資産が増え続ける中でどう次世代へ引き継ぐのか――。相続実務士・曽根惠子氏が、実例をもとにそのポイントを解説します。

Tさん自身の「攻め」の相続対策――贈与の限界点

Tさんは、すでに20冊以上の専門書を読み込み、ネットからも資料を収集して研究を重ねてきた、いわば「プロ並みの知識」を持つ60歳です。


その対策は、驚くべきスピードで進んでいました。現状の施策は、主に次の3点です。

1.徹底した生前贈与

年間110万円の非課税枠を活用し、子や孫など複数人へ分散。すでに累計3,000万円規模に達しています。

2.生命保険の活用

非課税枠(500万円×法定相続人数)を最大限に利用。

3.不動産への着手

現金を圧縮する目的で、区分マンションをローンで購入。しかし、ここで新たな課題が浮かび上がります。

直面する「嬉しい悲鳴」――資産増加スピード > 贈与スピード

Tさんの資産は、運用利回りが高く、毎年1,000万〜2,000万円のペースで増え続けていました。


いくら年間110万円ずつ贈与しても、それを上回るスピードで資産が増えてしまうのです。結果として、将来の相続税負担は、むしろ膨らみ続ける構造になっていました。

最終案としての「不動産戦略」と借入のレバレッジ

こうした状況のなかで、Tさんがたどり着いたのが「金融資産偏重から不動産へのシフト」でした。

 

金融資産(現金・有価証券)は、相続税評価額が時価の100%であるのに対し、不動産は路線価や固定資産税評価額を基準とするため、一般的に時価の7割〜8割程度まで圧縮されます。さらに賃貸物件であれば、借地権割合や借家権割合の影響で、評価額を一段と下げることも可能です。

 

この戦略のポイントは、次の3点に集約されます。

1.評価額の圧縮

1億円の現金を不動産に組み替えることで、評価額を3000万〜4000万円程度まで下げられる可能性があります。

2.債務控除の活用

ローンを組むことで、借入金を相続財産から差し引くことができます。

3.長期ローンの活用余地

70代、80代であっても、賃貸経営という「事業」であれば、子どもを連帯保証人とするなどの方法で、30年規模の融資を受けられるケースがあります。

10年後のビジョン――二世代住宅+収益物件

現在の築35年の自宅を、10年後、自身が70歳になるタイミングで「二世代住宅+賃貸併用」のRC造マンションへ建て替える。


これが、資産増加にブレーキをかけつつ、次世代への負担を抑えるための“グランドデザイン”です。

遺言書の「実効性」をどう担保するか

すでに自筆証書遺言を作成しているTさんですが、悩みは「資産内容が変動すること」です。

 

有価証券の銘柄や預金残高は日々変わるため、その都度書き直すのは現実的ではありません。

 

そこで有効なのが、公正証書遺言への切り替えと「割合指定」です。

 

・特定の資産ではなく、「金融資産の〇〇%を長女に」といった形で指定することで、資産の増減に柔軟に対応できる

・遺言執行者をあらかじめ定めておくことで、相続発生後の手続きを円滑に進められる

費用は20万円〜程度かかりますが、将来のトラブルを防ぐ「保険」と考えれば、十分に合理的な選択といえるでしょう。

お金は「使い方」で意味を持つ

「お金は人に使えば使うほど増えるんだ。お前もそうしろ」

 

これは、父親がTさんに伝えた言葉です。

 

Tさんは現在、年間50万円ほどを孫との会食(うなぎなど)に使い、さらに新NISAの口座を用意するなど、将来を見据えた「教育」という形で資産を活用しています。

 

相続対策の本質は、単なる節税ではありません。


自分が築いた資産を、次の世代にとって最も価値のある形で引き継ぐ――そのための設計です。

 

父親が対策を拒む姿勢も、見方を変えれば「最後まで自分の力でやり抜く」という、ひとつの生き方なのかもしれません。

まとめ

・親の対策は「受け入れる」という選択もある
・自分の対策は、不動産活用で評価圧縮を図る
・遺言は「変化に強い設計」に見直す
・ロジックだけでなく、家族との関係性も大切にする

 

相続は、長い時間をかけて進むプロセスです。

 

今、家族と食卓を囲むその時間こそが、どんな節税策にも勝る価値を持っているのかもしれません。

 

 

 

曽根 惠子
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®

株式会社夢相続 代表取締役

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

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