「正解だったはずの選択」でも、揺らぐ理由
ある夜、子どもを寝かしつけたあと、夫婦で将来の話をしていたときのことでした。
「ねえ、あのときのマンション、やっぱり良かったよね」
それは、これまで口にしたことのない本音でした。
「生活は今のほうが楽かもしれないけど、もし都内に住んでいたら、もっと違う毎日だったのかなって」
総務省『家計調査(2025年)』によると、二人以上の世帯の消費支出は月31万4,001円です。住宅にかかるコストを抑えることで生活の余裕は生まれますが、その一方で、時間や利便性といった別の価値を手放している可能性もあります。
「お金の面では、今のほうが間違いなく安心です。でも、それだけで“満足しているか”と言われると、少し違う」
住宅購入は、多くの場合「そのときの最適解」を選ぶ行為です。しかし時間が経てば前提が変わり、別の選択肢が魅力的に見えることもあります。
健介さん夫婦にとって、当時の判断は間違いではありませんでした。ただ、その選択が唯一の正解だったとも言い切れない――そんな感覚が残っているといいます。
「あのときの選択を後悔しているわけではないんです。でも、“もう一度選べるならどうするか”と聞かれたら、少し考えてしまいます」
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