「会費8万円で役員報酬4万円」…見せかけの安さに隠されたカラクリ
もっとも、Bさんの実際の収支を冷静に見ると、別の姿が見えてきます。
Bさんは毎月、一般社団法人に会費8万円を支払い、一方で役員報酬4万円を受け取るに過ぎません。ここに本人負担の社会保険料1万1,378.3円を加えると、毎月の実質負担は5万1,378.3円、年額では約61万6,540円になります。
つまり、国保と妻の国民年金をそのまま負担するより軽く見える一方で、「会費を払い、報酬を受け、そのうえで最低等級の社会保険に入る」という、歪な構造のうえに成り立つ話でもあったのです。
「資格取り消しになる?」踏みとどまらせた社労士の警告
Bさんからこの話を聞いたAさんも、一瞬は心が動きました。しかしAさんは、その場で飛びつかず、知り合いの社会保険労務士に相談します。
そこで示されたのが、平成15年6月30日の社会保険審査会裁決例でした。
判例では、形式的に資格取得の手続きを整えていても、実態として「その事業所に使用される者」といえなければ、被保険者資格が否認され得るとありました。
Aさんは「安く見えても、あとで資格が取り消されるのは怖い」と感じ、加入を見送りました。
国も問題視…厚生労働省の通知で問われる「役員としての実態」
その後、事態は大きく動きます。厚生労働省は令和8年3月18日、「法人の役員である個人事業主等に係る被保険者資格の取扱いについて」とする通知を発出しました。
そこでは、社会保険料の削減をうたい、個人事業主やフリーランスを法人役員に就け、役員報酬を上回る額の会費等を支払わせる事業所の存在を正面から問題視しています。
さらに、法人役員であっても健康保険・厚生年金の被保険者となるには、法人の経営に対する参画を内容とする経常的な労務の提供があるか、その報酬が当該業務の対価として経常的に支払われているかを実態に即して総合判断するとし、役員報酬を上回る額の会費等を法人に支払っている場合は、原則として業務の対価に見合った報酬を受けているとは認められないとも明記されています。
Bさんの状況は、まさにこの問題と重なります。
Bさんは役員就任を前提に加入しているため、経営に関する決裁権や会議以外の継続的な業務など、役員としての実態が問われます。単なる勉強会への参加や情報共有程度では認められにくく、理事という肩書きだけでは資格を維持できないのです。
