「残りのお金でどう生きるか」…贅沢のあとに残った現実
しかし帰国後、現実はすぐに戻ってきました。
手元に残った資産は約200万円。そこから今後の生活をどう組み立てるかを考えなければなりませんでした。
「楽しかった反面、通帳を見たときに少し怖くなりました」
総務省統計局『家計調査報告〔家計収支編〕2025年(令和7年)平均結果の概要』によると、高齢単身無職世帯の可処分所得は月11万8465円、消費支出は14万8445円と、平均で毎月約3万円の赤字です。貯蓄の取り崩しは、多くの高齢者にとって避けられない現実となっています。
恵理子さんも、自分の生活を見直す必要に迫られました。
まず取り組んだのは、固定費の整理でした。通信費や保険料を見直し、月々の支出を抑える工夫を始めました。
「クルーズに行ったことは後悔していません。でも、その後どう生きるかをちゃんと考えないといけないと思いました」
さらに、地域の仕事にも目を向けるようになりました。短時間のパートや、シニア向けの就労支援制度を利用し、少しずつ収入を補うことを検討しています。
「働けるうちは、少しでも働いた方が安心だと感じました」
一方で、心境の変化もあったといいます。
「お金は減りました。でも、“やりたかったことをやった”という気持ちは残っています」
相続した資産をどう使うかに、正解はありません。将来に備える選択もあれば、経験に使う選択もあります。ただ、どの選択であっても、その後の生活をどう維持するかは切り離せない問題です。
「楽しむことと、備えること。そのバランスが難しいですね」
「もしもう一度同じ状況になったら、全部は使わないと思います。でも、まったく使わない選択もしなかったと思います」
老後の資産は、「残すため」だけのものではなく、「どう使うか」によって人生の質を左右します。その一方で、使った後の現実とも向き合わなければなりません。
「最後の楽しみだと思っていた時間は、確かに自分の中に残っています。その上で、これからの暮らしをどう整えていくか。それが今の課題です」
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