試される耐性:マクロ環境に翻弄される中間層と内需セクター
勝者と敗者のいずれにも分類し難い「Mixed / Macro‐Dependent(マクロ依存・混在型)」セクターは、複雑な収益構造を持っています。このグループの企業は、ポジティブな要因とネガティブな要因が激しく拮抗しており、最終的な業績は今後のマクロ情勢の推移に強く依存することになります。
たとえば、国際港湾運営を担うICTグループ(ICT)は、世界的なドル建て収益が収益の底上げに寄与する一方で、景気減速に伴う貿易量の停滞が成長の足かせとなります。銀行セクターのBDOやBPIも同様です。金利上昇局面における貸出利ざや(NIM)の拡大という恩恵を受ける反面、急激な物価高による信用リスクの高まりや、不良債権比率の上昇という潜在的なリスクを同時に抱え込んでいます。結果としてEPSへの影響はほぼ中立(ゼロ)と試算されており、文字通り「勝ちも負けもしない」均衡状態にあります。
また、フィリピン最大の財閥系小売・不動産複合体であるSMインベストメンツ(SM)は、多角化された事業ポートフォリオがリスク分散に寄与するものの、インフレによる消費者マインドの冷え込みが国内小売事業を直撃するリスクが高まっています。EPSは▲1%〜▲3%の小幅な悪化が見込まれており、決して「安全圏」とは断言できない状況です。投資家には、各企業の収益におけるドル比率や、バランスシート上の負債構造をこれまで以上に緻密に精査する姿勢が求められます。
消費関連企業:物価高騰が招く「静かなる危機」
対照的に、国内の内需と消費に深く依存する企業群は、極めて厳しい局面を強いられています。大手食品メーカーのユニバーサル・ロビーナ(URC)は、原材料コストや物流費の全般的な上昇に晒され、▲3%〜▲5%の減益が予想されます。
さらに深刻なのは外食大手のジョリビー・フーズ(JFC)で、食材価格の高騰に加え、可処分所得の減少による外食需要の減退という「ダブルパンチ」に見舞われ、▲5%〜▲8%の大幅な利益圧迫が懸念されます。ファッション小売のSSIグループ(SSI)や、大手小売のロビンソンズ・リテール(RRHI)も、▲4〜▲9%という無視できないダメージを被る見通しです。
最大の打撃…不動産セクターと過剰債務の「三重苦」
本分析において「Worst Hit(最悪の影響)」と断定されているのが、不動産セクターおよびレバレッジ比率の高い企業群です。大手ディベロッパーのSMプライム(SMPH)やアヤラランド(ALI)は、金利上昇によるローン需要の減退、資材コストの上昇、そしてペソ安によるドル建て債務の支払い負担増という「三重苦」に直面しており、EPSはそれぞれ▲8%〜▲12%、▲7%〜▲10%という大幅な下落が想定されています。
メガワールド(MEG)にいたっては、膨大なドル建て債務と、インフレの影響を最も受けやすい中間所得層向け事業が主力であることから、▲9%〜▲13%という壊滅的な下押し圧力を受ける予測です。さらに、巨大コングロマリット(財閥)のアヤラ(AC)、アライアンス・グローバル(AGI)、JGサミット(JGS)も、事業の多角化がかえって裏目に出る形で、▲3%〜▲6%の複合的な業績悪化を免れないでしょう。
【注目のセミナー情報】
【海外不動産】4月9日(木)オンライン開催
税効果×資産成長を狙う!
高所得者のための新しい「アメリカ不動産投資戦略」
【資産運用】4月11日(土)オンライン開催
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】
