前回は、ブルーマウンテンズやオペラハウスという、オーストラリアが誇る2つの世界遺産の思い出を紹介しました。今回は、シドニーのオペラハウスから感じた「平和の尊さ」について見ていきます。

負の歴史もあるオペラハウス周辺…今日の平和に感謝を

この建物は、内部の木貼りのホールにスウェーデン産白タイル百五万六千枚のシェルをかぶせた「平泉の中尊寺」風の覆屋構造。コンクリート板の表面は大理石のように滑らか、一枚ごとに四点ビス留めで取り外しが容易で、床面も同じ。

 

イブニングの女性のために、ゆるい階段が多く、最近ではバリアフリーへの改造も進みエスカレーターも正面など一部には取り付けられた。そこの部分の照明にはLEDの明るい光を設けている。内部は大小四つのホールと五つのリハーサル・スタジオ、レストラン、バーもある。

 

現在のシドニー交響楽団指揮者は四年前までN響の常任だったアシュケナージである。なお、豪州演奏家で最も有名な人は、優れた女性指揮者のシモーネ・ヤング(現ハンブルク管弦楽団)とされている。

 

オペラのテラスでは、日本語ができる陽気な香港人の店で昼食をとった。カモメが飛んできたり、何よりきらめく青い青いハーバーの水面が美しかった。

 

先の大戦の初期、この水中を日本軍部独自の、帰りの燃料を持たない特殊潜航艇一隻がシドニー湾内深くに軍港の米艦をめざして突入した。

 

戦死を前にしての乗組員たちは狭い艇内を茶席に見立て、抹茶を喫した。辞世の句は「敵の地に深く入りける艦内に、ふくささばきの音の静けさ」という気負いのない短歌だった。粛然として、今日の暖かい平和に感謝。

シドニーを発ち、メルボルンへ向かう著者

シドニーは坂の街である。ホテルまで一・二キロメートルの登りなのでタクシーを拾った。この国のタクシーは自動ドアでない。最初の客が乗る時は助手席に座る。ドアは自分で開閉するが日本の自家用車のように乱暴に扱ったら窘められた。

 

豪州の英語はアクセントにくせがありロンドンの下町方言コクニーに近く、映画「マイ・フェア・レディ」のようにToday をトゥダイと発音するし、早口で米国人でさえ好まないそうだから、何とも大変だった。ホテル従業員などは標準英語だった。

 

十八時三十分発のカンタス航空でシドニーを発ち、メルボルンへ二十時五分に着いた。高層でアーティスティックなソフィテルホテルの四十六階の部屋へ入った。

 

七月三日になり、朝ロビーにいると埼玉県から来たライオンズクラブの夫妻がなんと昨日朝からシドニー、メルボルン間の約一〇〇〇キロメートルを電車で窓外を楽しみながら十一時間で着いたという。日本人としての進取の気性を誰もがこぞって讃えた。なお、この区間は現在新幹線の構想が進行中とのことである。

21世紀の驚くべき海外旅行

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藤間 敏雄

幻冬舎メディアコンサルティング

旅行する前に知っておきたい世界各国の歴史や政治状況を実際に各国へ訪れた著者が記す。 ロシアなら独自のインフラやモスクワの風格、 スペインは内戦の傷跡や王の気質を、 アメリカのドラッグ問題… 各国の宗教・伝統…

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