首相からシドニー市長まで…女性の活躍が目立つ豪州
翌朝の気温は一度となり、この季節にしては寒いのでジャンパーを着た。この日は全世界のライオンズ参加者のパレードがある。日本は男女共ハッピで参加。竹田幹事は全日本メンバーの仕切りということで張り切っていた。私は写真係。昨年より整然としたスタイルでハイドパークを出発し、一、二キロメートル行進しオペラハウスで解散した。
十四時に近くの「ベースメント」で軽くチキンの昼食をとり、ホテルへ戻ると午後はくたびれて休んだ。夕食のため十九時にツアーデスクへ行くと、昨年度のアメリカ旅行でのJTB添乗員さんに再会。彼女は仕切り役らしく、忙しそうで貫禄もついた感じ。
現地添乗員に案内され和食店「さくら」で美味い夕食。ガバナーも合流し、一年任期の名古屋勢ばかりで名刺交換して歓談。
翌三十日は三時起きでW杯の実況日本戦を、ホテルがサービスしたNHKの画面で見て寝不足となった。日本は敗れたが、トーナメントへ勝ち進んだだけでも大健闘と思う。
十時にエキジビションセンターにバスで移動し国際大会開会式。整然たる式だったが、ドイツ人の現会長の挨拶が功績吹聴で長すぎたので眠くなり、我々夫婦は困ったのでほうほうの体で途中退場した。
午後、世界有数の水族館・野生動物園を観覧したが、これは面白かった。まず水族館へ入るとすぐに五〇センチくらいの単孔類のカモノハシが活発に泳いでいて驚いた。生殖、消化、排尿の孔が一つで単孔類。卵を産むが、乳腺があるので哺乳動物。また、カンガルー以外にも有袋類が多い。フクロウサギ、フクロオオカミやウォンバットなど、形は北半球と同じだが皆フクロを持つ。
生物学的には「平行進化」「適応放散」などと呼ばれて、まだ研究されつくされない問題らしいが、孤立した大陸で別種の進化をした不思議さで、なんとなく化物屋敷的不気味さも感じる。だが、かつて他の珍種を容赦なく滅ぼして来た人間の悪を考え、健気に生きてきたこの動物園の生物たちの生命の将来を思うと、COP10名古屋会議の精神が見えてくる。
午前の開会式に話を戻すが、鮮やかなグリーンのドレスをまとった女性の総督に目をひかれたが、なんと豪州首相も、この州の知事も、シドニー市長まで、全員女性だという。この傾向は西欧で進んでおり、多分サッチャーの影響もあるだろうが豪州人の生活感と先進性に舌を巻く。これは国が豊かで利権が必要ないからできることだと私は思う。
世界自然遺産のブルーマウンテンズ国立公園を目指す
六月三十日夕刻、ベイサイド・オーディトリアムで、ライオンズ現会長の公約である青少年バイオリン・コンクールが行われるとのことで、興味があったので行ってみた。応募者は十人だったが日本人がいないのでガッカリした。
しかし一番の難曲バルトークのソナタの十六歳、B・J・アレン君が一位で一万ドルを得た。今後は金持ち子女の遊びにならないことを望む。芸術は人類の幸福への命懸けの奉仕だからだ。
翌日は七月一日で自由行動日。有志は世界自然遺産のブルーマウンテンズ国立公園観光に向かった。ガイドは正木嬢。シドニーから西へ上り坂約一〇〇キロメートル、二時間で、山頂の最高部は標高約一〇〇〇メートルという。バスはアンザック(第一次大戦兵士)の碑を通る。道路は日本車が半分以上だが、値段は日本の一・五倍だという。
パラマッタ地区は車ディーラーが多いがトヨタ車が一番多い。最近、車も含め物価が少し高くなった。この州の現行消費税を倍増させ二〇パーセントにする雰囲気もある。比較的に好景気の様子だ。
オリンピックのメイン会場は、ほぼシドニーの市域の一・五倍。二〇〇〇年の五輪での高橋尚子のマラソンコースは青色ラインが引いてある。
最近無料になったM4高速道路を走る。左右はほとんどユーカリ樹林だが、次第に別荘風の瀟洒な家が見られる。鉄道が並行し、これは三三〇〇キロメートル先の西海岸パースへつながるという。やっと自然遺産への中心地カトゥーンバへ着いた。