前回は、盛大なパレードに参加して感じた、豪州人の先進性について取り上げました。今回は、ブルーマウンテンズとオペラハウスという、オーストラリアが誇る2つの世界遺産の思い出をご紹介します。

先住民アボリジニの伝説が残る「ブルーマウンテンズ」

バスを降りて、大型ロープウェイで谷を超え、次いでギネスブックにも登録されている最大傾度五二度の坂を、トロッコ列車で標高六五〇メートルを三十秒で下るという大スリル。それから少し歩くとエコーポイントの展望台へ出る。ここからの眺めは、大パノラマである。遠くの山脈までユーカリの原生林に埋め尽くされている。

 

左端に奇岩三姉妹があり、先住民アボリジニの伝説がある。ここで祈祷師の父親と美しい三人姉妹の娘が平和に生活をしていたが、ユーカリ密林の魔物が襲ってきた。父は娘たちを岩にしたが、もとに戻す魔法の杖を密林に落としてしまった。父はココドリに変身して、今でも杖を探しているという哀れな物語である。

 

ユーカリの種はオーストラリア名物の山火事(ブッシュ・ファイアー)によりハジケて繁殖する。山火事は必要なできごとで、この国では決して災害ではないのである。

 

それにしても、私にとって米国のグランド・キャニオン以来の雄大な眺望である。ブルーマウンテンズの名の由来は、ユーカリの油とアルコールの霧に太陽光が当たり「青い山脈」になる。ユーカリは常緑樹でコアラの唯一のエサである。

 

近くに日系人から「シドニーの軽井沢」とよばれる可愛らしい別荘地ルーラがあり、並木は無論ユーカリである。こうして一番目の世界遺産観光は温度一七度、快晴という好条件の中で終わった。

 

シドニーに帰って、宝石店に案内された。豪州では一番はオパールで、アデレード北西一〇〇キロメートル付近で多く採掘されるが、一〇〇万年に一センチしか成長しない貴石だという。夕食は極上のシーフードの店「ブルーエンジェル」で巨大なロブスターに驚いた。

豪州建築陣の多大な苦労によって完成したオペラハウス

七月二日は世界文化遺産であり、シドニーハーバーの岬に海風になびくような白亜のオペラハウスの建築内部を個人見学。予約してあった十時に行くと、ナッシュ孝子さんが丁寧なガイドと一時間案内してくれた。

 

ヨットの帆をかたどり、表層をシェルにして球面の重層で造られた世界で稀な建築はデンマーク人ウッツォンの設計で、一九五六年にコンペに授賞した。三年工期の筈が、建築費ともども対立を生み、のちのトラブルに発展した。

 

一九五九年着工したが設計者は途中帰国してしまった。施工は豪州建築陣が結集し難航すること十四年、一九七五年に竣工。エリザベス女王が臨席し、この破天荒なオペラハウスが開館した。

 

特徴的な形をしているシドニーのオペラハウス
特徴的な形をしているシドニーのオペラハウス
21世紀の驚くべき海外旅行

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藤間 敏雄

幻冬舎メディアコンサルティング

旅行する前に知っておきたい世界各国の歴史や政治状況を実際に各国へ訪れた著者が記す。 ロシアなら独自のインフラやモスクワの風格、 スペインは内戦の傷跡や王の気質を、 アメリカのドラッグ問題… 各国の宗教・伝統…

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