前回は、英国植民時代の面影を残す港街「メルボルン」の魅力を紹介しました。今回は、独自の文化を持つ「オーストラリア大陸の歴史」について考えます。

もともとは「先住民アボリジニ」が暮らしていたが…

オーストラリアは国家であるが一つの大陸でもある。この大陸の成り立ちに触れてみよう。大陸移動説によると南米とつながっていたことは、有袋類を共有していることで知られ、北アメリカのオポッサムという有袋類の存在が証明している。

 

分離して豪州大陸になったのは約七万年前で、先住民アボリジニが、東南アジア方面からカヌーに乗って渡ってきたのは五万年前頃とされる。天敵のいないこの大陸で順調に増加し、欧州人が到達した頃には三十万人が遊牧や採集の民族として暮らしていたといわれ、独自の文化を持つ。

 

一七七〇年、イギリスの研究者J・クック船長が上陸し、大陸東部の領有を宣言し英国王に献呈した。イギリス政府は流刑地アメリカが独立してしまったので、豪州を流刑地として、八十八年に最初の(思想犯が多い)囚人七百余人がシドニー市を建設した。

 

やがて英国移民も増え、一八一三年にはブルーマウンテンズを越えたところに牧羊地に適する広大な沃野が発見され、豪州の第一次産業の経済が安定したという。ただアボリジニは相当滅ぼされたようで、現在人口は二十万人ほどに減ったが、シドニー五輪の開会式では彼らの人権が国際的に認知された。

 

この大陸では今でも三分の一の東部地方が文明生活に適しており、三分の二が水不足で砂漠か不毛の地である。昨年この砂漠に小惑星探査機「はやぶさ」が着地した。この快挙に戦前なら日本中が行進曲を叫んだろうに、最近は科学業績に対してマスコミも国民も無関心すぎる。

 

豪州は大地震の記憶がない極楽で、しかも、石炭と鉄の産出は世界一である。石炭は反石油の時代に大もてで、シドニーでも長い石炭貨物列車を見た。またレアアースも中国に劣らないくらい埋蔵されているそうだ。

治安の良さ、外交、防衛面では日本と似る点も

私がオーストラリアを知ったのは小学校(当時は国民学校)の三〜四年生頃で、この国は「白豪主義」で白人以外は人と認めない鬼畜の国だという凄い教育を受けた。勿論戦争中だった。真相は昭和初期の不況でアジア系移民の低賃金が許せず入国を禁止したという経済的理由だった。

 

現代では逆に労働者不足でアジア系移民は大歓迎で、人種も雑多だ。戦時中は日本空軍がダーウィンをはじめ北海岸六カ所を単発爆撃したが、マッカーサーの米軍が進駐したので豪州は大歓迎した。日本軍への大反攻は、ここに始まったのだ。

 

食料自給率は日本で五〇パーセントに満たない、豪州で二〇〇パーセント以上という極端な格差がある。

 

それになぜ日本だけデフレかと、日豪はまるで似ていない点が多いが、似ている点もある。両国とも比較的治安がよい点、外交、防衛面では自主的に行動できない点が挙げられる。つまり両国とも外見は独立心が薄く、親頼みに見える。

 

旅行中はライオンズクラブの同行の方々にお世話になった。今回の紀行文は私の従妹の次女(駐日オーストラリア大使館勤務)から資料を多く得た。有り難う。

 

(二〇一一年(平成二十三年)一月記)

21世紀の驚くべき海外旅行

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藤間 敏雄

幻冬舎メディアコンサルティング

旅行する前に知っておきたい世界各国の歴史や政治状況を実際に各国へ訪れた著者が記す。 ロシアなら独自のインフラやモスクワの風格、 スペインは内戦の傷跡や王の気質を、 アメリカのドラッグ問題… 各国の宗教・伝統…

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