「助けたい」と「これ以上は無理」の間で…母が口にした本音
妙子さんが限界を感じたのは、長女から「来月の授業料の一部もお願いできないか」と言われたときでした。
「そこまで来たか、と思いました。教育費って、一度出し始めると終わりが見えないんですよね」
もちろん、和美さんにも事情はありました。厚生労働省『2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況』で、児童のいる世帯の生活意識が厳しいことが示されている通り、物価上昇や教育費負担で家計が圧迫されている子育て世帯は少なくありません。妙子さんも、その現実自体は理解していました。
それでも、妙子さんは初めて言いました。
「悪いけど、これ以上は出せないわ」
電話の向こうで、娘は黙ったそうです。その沈黙が、かえって胸に刺さったと妙子さんは振り返ります。
「責められたわけじゃないんです。でも、“見放された”と思われたんじゃないかと考えてしまって」
数日後、2人は改めて話し合いました。妙子さんは通帳を見せ、自分の年金額と預金残高、今後必要になるかもしれない出費を説明しました。
「私も、無限に出せるわけじゃないの。今あるお金は、これから先の私の生活を支えるものでもあるのよ」
すると和美さんは、ようやく「そこまで苦しいと思っていなかった」と打ち明けたといいます。母にはまだ余裕がある、とどこかで思い込んでいたのです。
「私も、娘に“困っているなら当然助ける”という顔をしてきたから、余計にそう見えたんだと思います」
話し合いの結果、妙子さんが現金を継続的に出すのではなく、必要な時期と金額を限定して相談すること、あわせて奨学金や学校の減免制度、家計の見直しも検討することになりました。
「全部を断ったわけではありません。でも、“頼れば何とかなる”という前提は変えないといけないと思ったんです」
高齢期の家計は、派手な浪費がなくても崩れます。毎月の小さな援助でも、続けば老後資金を大きく削ります。しかも親世代は、自分の不安より子や孫の困窮を優先しがちです。
「孫のために使うお金が惜しいわけじゃないんです。ただ、助けたい気持ちだけで続けると、最後は誰も守れなくなります」
親が子を助けること自体は、決して珍しいことではありません。けれど、その支援が“愛情”の名の下に無制限になれば、支える側の生活まで危うくなります。必要なのは、続けられる形に線を引くことなのかもしれません。
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