「孫のためだから」…支援が家計を静かに圧迫
「頼れるのはお母さんだけなの」
そう言われたとき、妙子さん(仮名・74歳)はすぐに断ることができなかったといいます。長女の和美さん(仮名・42歳)からの言葉でした。夫婦共働きで子どもは2人。上の子は私立高校、下の子は塾に通っており、教育費の負担が急に重くなっていたといいます。
妙子さんの年金は月15万円ほど。夫に先立たれたあと、一人で暮らしてきました。持ち家で家賃はかからず、ぜいたくをしなければ何とかやっていける。本人もそう思っていました。
「自分の老後を守るだけなら、何とかなると思っていたんです。でも、娘に“もう無理”と言われると、放っておけませんでした」
最初は、入学金の不足分を少し貸すだけのつもりでした。10万円、15万円、時には教材費や模試代も立て替えました。
「“今だけだから”“来月には戻すから”と言われると、それならと思ってしまって」
ところが、その“今だけ”は続きました。部活の遠征費、塾の季節講習、修学旅行の積立金。さらに、学費以外にも「今月だけ食費が足りない」「下の子の習い事をやめさせたくない」といった相談が重なるようになります。
妙子さんは、そのたびに通帳からお金を下ろしました。
「孫に我慢させたくない気持ちが強かったんです。娘だって好きで頼っているわけじゃないと思っていましたから」
けれど、1年ほどたった頃から、妙子さんは違和感を覚えるようになりました。娘からの連絡は、近況報告よりも必要なお金の話が中心になっていったのです。
「最初は“助けてあげたい”でした。でも、そのうち“またなのか”と思う日が増えてきました」
ある月、妙子さんは通帳の記帳をして立ち尽くしました。預金残高が、自分の想像よりはるかに少なかったのです。
「大きな買い物をした覚えはないんです。でも、少しずつ出していたお金が積み重なっていました」
自分の通院費、家の修繕費、将来の介護費用。そうしたものに充てるはずだったお金が、静かに減っていた現実を前に、初めて不安が現実味を帯びたといいます。
「このまま続いたら、娘じゃなくて私が先に困るかもしれないと思いました」
