(※写真はイメージです/PIXTA)

定年や早期退職は、夫婦にとって暮らし方を見直す大きな節目です。退職金が入れば、ようやく一息つけると感じる人もいるでしょう。しかし、そのお金を「夫婦の老後資金」と見るのか、「自分が働いて得た自由なお金」と見るのかで、夫婦の認識が大きくずれることがあります。

「自分が働いて得た退職金」…夫の一言で揺らいだ老後設計

浩司さん(仮名・62歳)は、長年勤めた会社を退職しました。退職金は約2,200万円。住宅ローンは完済しており、妻の美奈子さん(仮名・60歳)とは、これからの暮らしについて少しずつ話し合う予定でした。

 

夫婦は結婚30年。子どもは独立し、ようやく夫婦二人の時間が戻ってきたところでした。

 

美奈子さんは、退職金を大切に管理しながら、年金受給までの生活費や医療費、家の修繕費に備えるつもりでいました。

 

「これからは収入が減るんだから、無理なく使っていこうね」

 

そう話した美奈子さんに、浩司さんは思いがけない言葉を返しました。

 

「もう、好きに生きてもいいだろ」

 

最初は、少し旅行をしたいという意味だと思いました。長年働いてきた夫が、自由な時間を楽しみたい気持ちは理解できます。

 

しかし、その後の行動は美奈子さんの想像を超えていました。

 

浩司さんは、高額なオーディオ機器を購入し、昔から憧れていた輸入車の中古車を契約。さらに、友人とのゴルフ旅行にも頻繁に出かけるようになりました。

 

「ずっと我慢してきたんだ」

「これくらい使っても、まだ残るだろ」

 

そう言われるたび、美奈子さんは強く言い返せませんでした。

 

総務省『家計調査(2025年)』によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯では、可処分所得が月22万1,544円である一方、消費支出は月26万3,979円となっており、平均では毎月赤字です。老後は、貯蓄や退職金を計画的に取り崩しながら暮らす世帯も少なくありません。

 

夫婦も、今後は年金中心の生活になります。退職金2,200万円は、贅沢のためだけのお金ではなく、夫婦の生活を支える重要な資金でした。

 

それでも浩司さんは、こう言いました。

 

「俺が働いてもらった金なんだから、少しくらい自由に使わせてくれ」

 

その一言に、美奈子さんは胸の奥が冷たくなるのを感じました。

 

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