(※写真はイメージです/PIXTA)

長年の夫婦生活の中で、家計や手続きの役割分担は自然に固定されがちです。しかしその一方が突然いなくなったとき、残された側が生活の基盤を把握できていないという事態も少なくありません。老後の安心は、資産の額だけでなく、それを自分で扱えるかどうかにも左右されます。

遺されて直面した“お金を管理できない現実”

由美さんはすぐに実家へ向かいました。通帳や書類を一つひとつ確認していくと、複数の銀行口座、定期預金、保険契約、さらには使っていないクレジットカードまで出てきました。

 

「母はきちんと管理していたんだと思います。でも、それが父には全く共有されていなかった」

 

中には、すでに不要になっている保険契約もありました。一方で、解約すべきか判断が難しいものもあり、すぐに整理できる状況ではありませんでした。

 

「父は“全部解約していいのか”と不安がっていました。でも、それを判断するための前提知識がないんです」

 

隆一さんは、それまで「お金はあるから大丈夫」と思っていました。しかし実際には、「どう使えばいいのか分からない」という状況に直面していたのです。

 

その後、由美さんは父と一緒に銀行や保険会社を回り、口座の整理や契約内容の確認を進めました。時間はかかりましたが、徐々に全体像が見えてきたといいます。

 

「一つひとつ確認していくしかありませんでした。でもそれをしない限り、不安は消えないので」

 

また、必要に応じて専門家への相談も検討しました。高齢期の資産管理では、家族だけで抱え込まず、金融機関や専門家のサポートを受けることも現実的な選択肢です。

 

隆一さんも、少しずつ状況を理解し始めました。

 

現在は通帳や契約内容を一覧にまとめ、どの口座に何があるのかを把握できる状態にしています。

 

「正直今でも不安はあります。でも“分からないまま”ではなくなっただけでも、かなり違います」

 

配偶者を亡くすことは、感情面だけでなく、生活そのものを大きく揺るがします。特に役割分担が固定されていた場合、その影響は想像以上に大きくなります。

 

老後の安心は、誰かに任せることで成り立つものではありません。共有し、理解し、必要なときに自分でも扱える状態にしておくことが求められます。

 

 

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