遺されて直面した“お金を管理できない現実”
由美さんはすぐに実家へ向かいました。通帳や書類を一つひとつ確認していくと、複数の銀行口座、定期預金、保険契約、さらには使っていないクレジットカードまで出てきました。
「母はきちんと管理していたんだと思います。でも、それが父には全く共有されていなかった」
中には、すでに不要になっている保険契約もありました。一方で、解約すべきか判断が難しいものもあり、すぐに整理できる状況ではありませんでした。
「父は“全部解約していいのか”と不安がっていました。でも、それを判断するための前提知識がないんです」
隆一さんは、それまで「お金はあるから大丈夫」と思っていました。しかし実際には、「どう使えばいいのか分からない」という状況に直面していたのです。
その後、由美さんは父と一緒に銀行や保険会社を回り、口座の整理や契約内容の確認を進めました。時間はかかりましたが、徐々に全体像が見えてきたといいます。
「一つひとつ確認していくしかありませんでした。でもそれをしない限り、不安は消えないので」
また、必要に応じて専門家への相談も検討しました。高齢期の資産管理では、家族だけで抱え込まず、金融機関や専門家のサポートを受けることも現実的な選択肢です。
隆一さんも、少しずつ状況を理解し始めました。
現在は通帳や契約内容を一覧にまとめ、どの口座に何があるのかを把握できる状態にしています。
「正直今でも不安はあります。でも“分からないまま”ではなくなっただけでも、かなり違います」
配偶者を亡くすことは、感情面だけでなく、生活そのものを大きく揺るがします。特に役割分担が固定されていた場合、その影響は想像以上に大きくなります。
老後の安心は、誰かに任せることで成り立つものではありません。共有し、理解し、必要なときに自分でも扱える状態にしておくことが求められます。
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