「ここではもう難しい」…突きつけられた次の現実
面談のあと、高橋さんはすぐにケアマネジャーや地域包括支援センターに連絡しました。しかし、そこで待っていたのは、次の受け皿探しの厳しさでした。
「医療対応が必要になると、入れる場所が一気に限られるんです」
有料老人ホームでは対応できる医療行為に差があり、費用面の負担も重くなりがちです。介護老人保健施設は在宅復帰を前提とした施設で、長期的な生活の場とは性格が異なります。
介護医療院や医療機関への転院も選択肢にはなりますが、すぐに受け入れ先が決まるとは限りません。厚生労働省は、介護保険施設について、急変や入院治療に対応するため協力医療機関との連携が必要だと示しており、現実にも多くの高齢者施設で、状態悪化時には入院や転院が発生しています。
家計の不安もありました。正一さんの年金は月15万円で、特養だからこそ何とか成り立つと考えていた高橋さんにとって、より負担の重い施設への移行は簡単に決められる話ではありませんでした。
「父のために必要な場所を探さなきゃいけない。でも、現実には費用も空きもある。何を優先すればいいのか、頭が真っ白になりました」
高橋さんは、施設長の言葉に腹を立てた時期もあったといいます。
「見放されたように感じたんです。でも、父の状態を見れば、職員さんたちが苦労していたのも分かる。誰かが悪い、で片づけられる話じゃありませんでした」
最終的に、高橋さんは父をいったん協力医療機関に入院させたうえで、退院後の受け皿として、医療対応が比較的厚い施設を探す方針に切り替えました。すぐにすべてが解決したわけではありませんが、「特養に入れたら終わり」ではなく、その後も状態に応じて住まいを見直さなければならない現実を知ったといいます。
「特養に入れたとき、ようやく介護が落ち着くと思っていました。でも実際は、そこから先もずっと判断の連続だったんです」
高齢の親の住まい探しは、入所そのものがゴールではありません。心身の状態が変われば、必要な支援も変わります。長い待機を経て手に入れた“安心”が、想像以上にもろいこともあるのです。
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