「かわいい」だけでは支えきれない…必要だった“線引き”
悩んだ末、夫妻は彩子さんに話をすることにしました。
「毎日来るのはもう難しいかもしれない。せめて曜日を決めたいし、食費や送迎も含めて、もう少し考えてほしい」
すると、彩子さんは最初、驚いた顔をしたそうです。
「え、お母さんたち、喜んでくれてると思ってた」
その言葉に、田中さんは複雑な気持ちになったといいます。自分たちも、これまで「大丈夫」「気にしないで」と言ってきたからです。
「娘を責める気持ちだけではありませんでした。こちらも、無理を無理と言わずに引き受けてきてしまったので」
ただ、体力の低下はごまかせませんでした。助け合い自体は珍しくありませんが、それが恒常化し、無償の労働として固定されれば、支える側の生活が先に傷みます。
話し合いの結果、孫を預かるのは「週2回まで」、夕食が必要な日は事前に連絡を入れること、保育園のお迎えが難しい日はファミリー・サポート・センターの利用も検討することになりました。子育て支援には自治体ごとの差はあるものの、家族だけで抱え込まず、地域の支援や有償サービスを組み合わせることは現実的な選択肢です。
「全部を断ったわけではありません。でも、“できること”と“できないこと”を分けて伝えたら、少し気持ちが楽になりました」
現在も、孫たちはよく家に来ます。ただし、以前のように“毎日当然に頼られる”状態ではなくなりました。田中さんは言います。
「孫に囲まれるのは幸せです。でも、幸せって、無理を重ねた先にあるものではないんですよね」
老後の家計を揺るがすのは、必ずしも大きな失敗や浪費だけではありません。家族のための小さな持ち出し、断れない送迎、善意で引き受けた日々の世話。その積み重ねが、静かに暮らすはずだった夫婦の老後を変えていくことがあります。
「助けたい気持ちは今もあります。でも、自分たちの生活を守ることも、同じくらい大事なんだとやっと分かりました」
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