「行き場がない」…制度と現実のはざまで揺れる高齢者
その後、吉野さんは新たな施設を探すことになります。しかし、ここでさらに厳しい現実に直面しました。
「次を探そうとしても、簡単には見つからないんです」
要介護度や医療的ケアの必要性によって、入居できる施設は大きく限られます。特に、特別養護老人ホーム(特養)は費用面での負担が比較的軽い一方、入居待機者が多く、すぐに入れるケースは稀です。
厚生労働省の資料でも、特養の待機者問題は長年指摘されており、地域によっては数百人規模の待機が発生しているとされています。
「申し込みはしましたけど、“いつになるか分からない”と言われて…」
一方で、有料老人ホームや介護付き施設は、受け入れ体制によって条件が異なります。医療依存度が高い場合、受け入れを断られることも少なくありません。
また、費用面の問題も立ちはだかります。総務省『家計調査(2025年)』によれば、高齢単身無職世帯の平均消費支出は月約15万円で、施設費用がこれを大きく上回る場合、長期的な継続は難しくなります。
吉野さんも複数の施設に問い合わせを行いましたが、条件が合わず断られることが続きました。
「お金の問題もありますし、状態の問題もあると言われて…どこにも行けないんじゃないかと思いました」
そして、ある日。通帳を見ながら、ふと手が止まりました。
「このまま次が決まらなかったら、どうすればいいんだろう」
その場で膝から崩れ落ちたといいます。
現在は、地域包括支援センターに相談しながら、医療対応が可能な施設や在宅支援の選択肢も含めて検討を進めています。
「最初から全部わかっていれば、選び方も違ったのかもしれません」
高齢者施設は「終の住処」として選ばれることも多い一方で、実際には契約内容や身体状況によって、継続が難しくなるケースもあります。老後の住まい選びは、一度の決断で完結するものではありません。
「安心できる場所を選んだはずなのに、また探さなきゃいけないなんて思ってもみませんでした」
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