最期まで過ごすつもりが…入居半年で突きつけられた現実
「ここで最期まで過ごせると思っていたのに…どうしてなんでしょう」
そう語るのは、77歳の吉野さん(仮名)です。
高齢期に入り、自宅での生活に不安を感じたことから、有料老人ホームへの入居を決断しました。年金は月18万円。決して余裕があるわけではありませんが、「何とかやっていける範囲」と判断し、入居を決めたといいます。
近年、同様の選択をする高齢者は増えています。内閣府『令和7年版 高齢社会白書』によれば、単身高齢者世帯は増加傾向にあり、日常生活に不安を抱える人も少なくありません。施設入居は、その不安を解消する現実的な選択肢の一つとなっています。
吉野さんも、「ここなら安心して暮らせる」と期待していました。入居当初は、職員のサポートも手厚く、食事や生活環境にも満足していたといいます。
「最初は本当に安心していました。食事も出るし、誰かが見てくれるというだけで気持ちが楽になって」
しかし、その穏やかな日常は長く続きませんでした。
入居から数ヵ月が経った頃、体調の変化が現れます。転倒をきっかけに通院が増え、徐々に介助の必要な場面が増えていきました。
すると、施設側から面談の申し出があったのです。
「少しお話したいことがありまして…」
案内された部屋で告げられたのは、予想もしなかった言葉でした。
「現在の状態ですと、当施設での継続的な受け入れが難しい可能性があります」
一瞬、意味が理解できなかったといいます。
「え…? それって、出ていけということですか?」
施設側は「医療的ケアの必要性」や「人員体制の問題」を理由に挙げました。入居時の想定を超える介護・医療ニーズが発生した場合、対応できないケースがあるというのです。
実際、有料老人ホームの多くは、重度の医療依存状態には対応できない場合があります。契約内容によっては、状態の変化により退去を求められる可能性があることも、事前に説明されていることが一般的です。
とはいえ、吉野さんにとっては受け入れがたい現実でした。
「ここで最後まで過ごすつもりで、家も整理してきたんです」
穏やかに暮らしていくはずだった場所で、再び「行き場」を探さなければならない状況に追い込まれたのです。
