(※写真はイメージです/PIXTA)

老後資金の準備が整っていても、想定外の要因によって生活設計が崩れるケースは少なくありません。親亡き後の「きょうだいの生活問題」が顕在化し、高齢期に思わぬ負担を抱える人も。経済的な備えだけでなく、家族関係や将来の支援体制をどう考えるかが、老後の安心を左右する重要な要素になりつつあります。

高齢化する「ひきこもり」と家族の負担

こうした問題は、決して特殊なケースとは言い切れません。

 

内閣府『こども・若者の意識と生活に関する調査(令和4年)』によれば、40歳以上のひきこもり状態にある人は全国で推計61万人にのぼるとされています。いわゆる「8050問題(80代の親と50代の子)」は社会課題として広く知られていますが、親の死後にきょうだいへ負担が移るケースも指摘されています。

 

ある日、陽子さんは通帳を見て手が止まりました。

 

「このままだと、私の老後資金も持たないかもしれない…そう思ったんです」

 

これまで積み上げてきた貯蓄が、予想以上のスピードで減っていく現実。さらに、自身の将来的な介護や医療費の不安も重なります。

 

「自分の人生も守らなきゃいけないと思いました」

 

悩んだ末、陽子さんは弟に対し、今後の生活について話し合う決断をします。

 

「このままでは支え続けることはできない。何かしらの支援制度を利用するか、生活の立て直しを考えてほしい」

 

言葉を選びながらも、はっきりと伝えたといいます。

 

陽子さんは自治体の相談窓口にも足を運び、生活困窮者支援や就労支援の制度について情報収集を始めました。生活保護制度や自立相談支援事業など、本人の状況に応じて利用できる支援は存在しますが、家族がすべてを抱え込んでしまうケースも少なくありません。

 

「もっと早く相談していればよかったのかもしれません。でも家族とはいえ、どこまで踏み込んでいいのか分からなかったんです」

 

老後の生活は、個人の資産や年金だけでは測れない側面があります。家族の事情、とりわけ長年見過ごされてきた問題が、後になって大きな負担として表面化することもあるのです。

 

「自分の老後を守ることと、家族を見捨てないこと。そのバランスをどう取るのか、今も答えは出ていません」

 

 

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