老後は安泰のはずが…母の死で突きつけられた“もう一つの現実”
首都圏在住の陽子さん(仮名・66歳)は、数年前に会社を退職しました。年金は月約23万円。退職金やこれまでの貯蓄を合わせて約2,000万円があり、「贅沢はしなくても、穏やかに暮らせる」と考えていたといいます。
「夫もすでに他界していますし、あとは自分のペースで暮らしていければ十分だと思っていました」
持ち家で住宅ローンもなく、生活費も大きくはかからない。老後の見通しは決して悲観的なものではありませんでした。
しかし、その前提を覆す出来事が起きます。同居していた母の死がきっかけでした。
葬儀を終え、実家の整理を進める中で、陽子さんは改めて向き合うことになります。25年以上にわたり実家で生活してきた弟・勝さん(仮名・58歳)の存在に。
勝さんは長年仕事に就いておらず、いわゆる「ひきこもり状態」にありました。生活費の多くは、これまで母の年金や貯蓄に頼ってきたといいます。
「母がいる間は、正直どこかで“なんとかなる”と思っていたんです。でも、その支えがなくなった途端に、現実が一気に押し寄せてきました」
陽子さんは、実家に残る弟とどう向き合うべきか、決断を迫られることになります。
最初は、生活費の一部を支援する形で様子を見ることにしました。
「いきなり放り出すわけにもいかないと思って…。食費や光熱費の一部を負担することにしたんです」
しかし、その支出は徐々に増えていきました。医療費や突発的な出費も重なり、月に数万円単位での負担が続きます。
「気づいたら、自分の生活費とほとんど変わらないくらい出ていく月もありました」
さらに精神的な負担も大きかったといいます。
「弟は悪気があるわけじゃないんです。でも、“働く気はない”という姿勢を変えないままで…。このまま何十年も続くのかと思うと、怖くなりました」
