(※写真はイメージです/PIXTA)

94歳の祖母が口にする「老後のために貯めている」という言葉。堅実な心がけにも聞こえますが、その年齢で語られる「未来への備え」には、拭いきれない矛盾と違和感が漂います。人生の最終盤を迎え、いままさに支えが必要なはずの時期に、エアコン代さえ惜しんで「いつか来る日のため」に資産を封印し続ける――。そんな資産管理の本当のリスクとは? 本記事では、佐藤家(仮名)の事例とともに、適切な資産の流動化についてFP相談ねっと・認定FPの小川洋平氏が解説します。※本記事は実話をベースに構成していますが、プライバシー保護のため、個人名や団体名、具体的な状況の一部を変更しています。

「老後のために貯めている」94歳祖母に覚えた違和感

都内で働く会社員の佐藤翔太さん(仮名/24歳)。大学進学を機に地方を離れ、そのまま東京で就職しました。普段は忙しく地元に帰る機会も少ないのですが、年に数回は帰省しています。

 

翔太さんには94歳になる祖母・ハルさん(仮名)がいます。ハルさんは翔太さんの実家のすぐ近くで祖父が亡くなって以来一人暮らし。年金月15万円ほどで、質素な生活を続けていました。古い家で、夏も冬もエアコンを極力使わず、「もったいない」が口癖だったのです。

 

そんな祖母がある日、こんなことを口にしました。

 

「老後のために、ちゃんと貯めているから、私が死んだらお前たちにあげるからね」

 

そういって祖母は、亡き祖父が使っていた書斎へと翔太さんを案内します。そこは長年ほとんど手がつけられていない部屋で、祖父の古い本棚や机がそのまま残されており、部屋の隅には、ひときわ存在感のある古びた金庫が置かれていました。

 

祖母は慣れた手つきで金庫を開けると、中からいくつもの封筒を取り出し、「これだよ、ちゃんと貯めてあるの」そういって翔太さんに差し出します。

 

封筒の中にあった「時代の止まったお金」

封筒の中に入っていたのは一万円札でしたが、どこか違和感が……。

 

「……あれ?」

 

よく見ると、そこに描かれていたのは福沢諭吉でも渋沢栄一でもありませんでした。

 

「聖徳太子……?」

 

翔太さんが目にしたのは、すでに流通していない旧札だったのです。祖母はそれを誇らしげに見せながらいいました。

 

「おじいちゃんが、ずっと貯めていたのよ」

 

さらに金庫の中を見て、翔太さんは言葉を失います。同じような封筒が、整然と並んでいたのです。一つ一つの封筒には「100万円」と書かれており、その数はざっと20個。つまり、2,000万円相当の現金が保管されていました。

 

聖徳太子の一万円札は、1984年11月に福沢諭吉のデザインへと変更されています。つまり、この現金は少なくとも昭和の時代から金庫に眠り続けていたことになります。祖父は長年かけてこのお金を貯め、約40年もの間それを使わずに守り続けてきたようです。

 

帰宅後、この話を父に伝えると、家族は一様に驚き、そして呆然としました。

 

「94歳で老後に備えてって……」

 

日ごろの質素な暮らし、そして祖父が要介護状態になったときも寝たきりに近い状態まで自宅で介護していたため、きっとお金の余裕がないのだろうと思っていました。ところが、約40年ものあいだ、使うべきときに使わなかったお金を金庫に眠らせていたことがわかり、呆れかえったのです。

 

 

 

次ページ祖父の相続時に「存在しなかったもの」として扱われていた

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