仕送りの限界と再調整
総務省『家計調査(2025年)』によると、高齢単身無職世帯の消費支出は14万8,445円であるのに対し、可処分所得は11万8,465円にとどまり、平均的にも赤字構造となっています。この差額を補うため、貯蓄の取り崩しや家族からの支援に頼るケースが少なくありません。
一方で、民法では直系血族間の扶養義務が定められていますが、その内容は「生活を犠牲にしてまで無制限に支える」ものではなく、あくまで各自の生活を維持したうえでの相互扶助とされています。
その後、山本さんは仕送り額を月3万円に減額。あわせて、母には自治体の相談窓口や支援制度の利用を提案しました。
和子さんも、介護保険サービスの活用や生活費の見直しを進めるようになったといいます。
「最初は申し訳ない気持ちが強かったですが、今はこれでよかったと思っています」
仕送りを前提に生活設計を組み立てていなかったこと、そして支援のあり方を見直すタイミングを先送りにしていたことが、結果として負担を大きくしていたのではないかと振り返ります。
今回のケースが示しているのは、親を支えることと、自分自身の生活を守ることは必ずしも両立し続けられるものではない、という現実です。家族間の支援は重要である一方で、それが一方的な負担として固定化されれば、いずれどこかで限界が訪れます。
山本さんは、母の生活を思う気持ちと同時に、自分たちの生活基盤を維持することもまた責任であると考えるようになりました。仕送りの見直しは、関係を断つための決断ではなく、無理のない形で支え続けるための再調整だったといえます。
仕送りは単なる金銭のやり取りではなく、家族の関係性や役割のバランスを映し出すものです。だからこそ、「どこまで支えるのか」を曖昧にしたまま続けるのではなく、早い段階で現実的な線引きを共有しておくことが、結果的に双方の生活を守ることにつながるのかもしれません。
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