「やっとここまで来た」昇進で得た達成感も束の間…
「正直、かなりうれしかったです」
そう話すのは、都内の企業に勤める会社員・田中さん(仮名・43歳)です。新卒から同じ会社に勤め続け、今回、課長職への昇進が決まりました。
基本給の引き上げに加え、役職手当も支給されることになり、年収ベースではおよそ80万円増える見込みでした。
「これで家計にも余裕が出ると思っていました」
しかし昇進後、最初の給与明細を確認した田中さんは、思わず言葉を失ったといいます。
「え、これだけ…?」
確かに額面は増えていました。しかし、実際に振り込まれた手取り額は、想像していたほど増えていなかったのです。
「もっと増えていると思っていたので、正直かなり戸惑いました」
給与明細を細かく見ていくと、その理由が見えてきました。
まず大きかったのが、社会保険料の増加です。厚生労働省の制度では、健康保険料や厚生年金保険料は「標準報酬月額」に応じて決まり、給与が上がると段階的に保険料も引き上げられます。
さらに、所得税も累進課税の仕組みにより、収入が増えるほど税率が高くなる部分があります。また、住民税については前年の所得をもとに課税されるため、翌年以降に負担増を実感するケースもあります。
「額面は上がっているのに、引かれる金額も一気に増えていたんです」
田中さんが感じたのは、単なる金額の問題だけではありませんでした。
「頑張って昇進したのに、“生活が楽になった感じ”はあまりありません」
実際、昇給による手取り増は、月ベースで見ると数万円程度にとどまるケースも少なくありません。そこに物価上昇や生活費の増加が重なると、可処分所得の増加を実感しにくくなります。
さらに田中さんは、後からもう一つの変化に気づきます。
「住民税が上がって、さらに手取りが減った感じがしました」
総務省の制度でも、住民税は前年の所得を基準に計算されるため、昇給の影響が翌年に反映される仕組みです。つまり、昇進直後だけでなく、時間差で負担増が生じることになります。
