「自分が支えなければ」続けてきた仕送り
「母の生活は、自分が何とかするしかないと思っていました」
そう話すのは、関東地方で働く会社員・山本さん(仮名・59歳)です。月収は手取りで約35万円。妻と二人暮らしで、住宅ローンはすでに完済していましたが、老後資金の準備も進めている最中でした。
母・和子さん(仮名・82歳)は地方で一人暮らし。年金収入は月11万円で、持ち家ではあるものの、固定資産税や光熱費、医療費を差し引くと、生活は決して楽ではありませんでした。
「最初は月2万円くらいからでした」
やがて仕送りは徐々に増え、最終的には月5万円にまでなっていきました。
「気づけば、自分の生活の中でも無視できない金額になっていました」
山本さんは長年、「何とかなる」と考えてきました。しかし、状況は少しずつ変わっていきます。物価の上昇により日常の支出が増え、自身の将来への不安も強まっていきました。
物価の上昇や将来への不安が重なる中で、山本さんは自分たちの老後資金についても現実的に考えざるを得なくなっていきました。家計を見直す中で、毎月の仕送りが将来の貯蓄に与える影響の大きさも明らかになります。
妻からも、現在の支援をこのまま続けることの難しさを指摘されるようになり、山本さん自身も次第に限界を意識するようになっていきました。母の生活が厳しくなることは理解していたものの、このまま支援を続ければ、自分たちの生活基盤そのものが揺らぐ可能性がある――そんな現実が、はっきりと見えてきたのです。
それでも、すぐに決断することはできませんでした。長年続けてきた仕送りを見直すことは、単なる金額の問題ではなく、親子関係そのものに影響する選択だったからです。
悩んだ末、山本さんは母に仕送りの減額を伝えることを決めました。電話口で事情を説明すると、母はしばらく言葉を失ったあと、状況を受け止めるように静かに応じたといいます。そのやり取りを経て、山本さんは初めて「支え続けることの限界」と向き合った実感があったと振り返ります。
