(※写真はイメージです/PIXTA)

中東情勢の緊迫化により、世界の液化天然ガス(LNG)供給の約2割を担うカタールの生産が停止する事態が発生しました。報道では原油輸送への影響が注目されていますが、日本のエネルギーを支えるLNGもまた、無視できない存在です。輸入先の分散によって一定の安定性を確保している日本ですが、価格上昇の影響は避けられない可能性があります。さらに見落とされがちなのが、LNGに課されている税負担です。本稿では、LNGの供給構造とともに、エネルギー価格の裏側にある税制の仕組みについて、2026年3月に『世界の税金はどうなっているのか 富裕層の相続戦略シリーズ【国際編】』を刊行した矢内一好氏がわかりやすく解説します。

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LNGは石油に次ぐ重要エネルギー

液化天然ガス(Liquefied Natural Gas:LNG)は、主成分がメタンであり、都市ガスや火力発電の燃料、水素製造など、幅広い用途で利用されています。天然ガスをマイナス162度程度まで冷却し液体化することで、体積を大幅に圧縮できるため、長距離輸送が可能になります。

 

同じくガスを液化した燃料として液化石油ガス(LPG)がありますが、こちらはプロパンやブタンが主成分です。用途や流通形態も異なり、LNGは主に大規模な発電用途、LPGは家庭用や業務用燃料として利用されるケースが多くなっています。

 

また、LNGは石炭や石油と比較して二酸化炭素の排出量が少ないため、いわゆる「クリーンエネルギー」として位置付けられています。

カタール生産停止の衝撃…世界供給の2割が揺らぐ

2026年3月、米国およびイスラエルによるイラン攻撃への報復として、カタールが攻撃を受け、同国におけるLNG生産が停止する事態となりました。

 

カタールは世界有数のLNG輸出国であり、その供給量は世界全体の約2割を占めています。この供給が途絶することは、単なる一国の問題ではなく、世界のエネルギー市場全体に波及する重大なリスクです。

 

報道では、ホルムズ海峡封鎖による原油輸送への影響が大きく取り上げられていますが、同海峡はLNG輸送にとっても重要な要衝です。したがって、今回の事態は「石油だけの問題ではない」という点に注意が必要です。

日本のLNG調達構造 ーー「分散戦略」は機能するか

日本はエネルギー資源の多くを輸入に依存しており、LNGについても例外ではありません。ただし、特定地域への依存を避けるため、輸入先の分散を進めてきました。

 

2023年の輸入実績を見ると、最大の供給国はオーストラリアで42.5%を占め、これにマレーシア(15%)、ロシア(8.9%)、米国(7.2%)などが続きます。中東からの輸入は、カタール(5.1%)、オマーン(3%)、アラブ首長国連邦(1.4%)を合わせても約1割にとどまります。

 

このような分散戦略により、日本は韓国や台湾と比較して、特定国の供給停止による直接的な影響を抑えやすい構造となっています。

LNGが高くなる構造的理由

LNGは、液化・貯蔵・輸送・再ガス化といった複雑な工程を経て供給されます。特に液化設備や専用タンカーなどのインフラ投資が必要であり、石油と比べてもコスト構造が重くなりがちです。

 

また、LNGは市場の流動性が石油ほど高くないため、需給の変動が価格に反映されやすいという特徴があります。今回のように主要供給国の生産が停止すれば、代替調達の競争が激化し、価格が急騰する可能性があります。

石油石炭税と炭素税の影響

輸入されたLNGには、「石油石炭税」と、炭素税の一種である「地球温暖化対策のための税」が課されています。

 

石油石炭税は1978年に創設された税であり、石油・石炭・LNGなどの化石燃料に幅広く課税される仕組みです。これに加え、2012年からは地球温暖化対策の観点から、CO2排出量に応じた税負担が上乗せされています。

 

これらの税は電気料金やガス料金に転嫁されるため、最終的には企業や家庭が負担することになります。しかし、その存在はあまり意識されておらず、「見えにくいコスト」となっています。

 

なお、名称が似ている「石油ガス税」は、自動車用LPガスに課される別の税であり、道路整備の財源とされる目的税です。LNGとは直接関係がないため、混同には注意が必要です。

価格上昇は避けられないのか

今回のカタールにおける生産停止により、同国からの輸入に依存度の高い韓国や台湾では、より深刻な影響が懸念されています。

 

一方、日本は調達先の分散により供給面での耐性を一定程度確保していますが、価格面の影響を回避することは困難です。国際市場でのLNG価格が上昇すれば、結果として電力コストや製造コストの上昇を通じて、日本経済全体に波及する可能性があります。

 

さらに、エネルギー価格に上乗せされる税負担も、こうしたコスト増を下支えする要因となります。エネルギー安全保障を考える上では、供給源の多様化だけでなく、税制を含めた「総コスト」の視点がますます重要になるといえるでしょう。

 

 

矢内 一好

国際課税研究所

首席研究員

 

 

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