(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢期の生活は、年金や資産だけでなく家族との関係にも大きく左右されます。内閣府『令和6年版 高齢社会白書』によると、65歳以上の単身・夫婦のみ世帯は増加を続けており、家族の支援が得られない状況で暮らす高齢者も少なくありません。また総務省『家計調査(2024年)』では、高齢夫婦のみの無職世帯は平均で月約3.4万円の赤字となっており、住宅維持費などが生活を圧迫するケースもあります。こうした背景の中で、住まいを手放す高齢者も一定数存在しています。

持ち家でも生活は安定しない…公営住宅という選択

娘との関係が途絶えたあと、夫妻は改めて生活を見直しました。

 

掃除が追いつかない家。庭の管理。老朽化する建物。持ち家は資産でもありますが、維持には手間と費用がかかります。

 

総務省『住宅・土地統計調査』でも、高齢者世帯の持ち家率は高い一方で、管理負担が課題になるケースが指摘されています。

 

「家があるから安心、とは言えないんだなと思いました」

 

夫妻が最終的に選んだのは、公営住宅でした。地方自治体が提供する住宅で、収入に応じた家賃で入居できます。国土交通省の制度では、原則として低所得世帯などが対象となり、家賃は収入に応じて設定されます。

 

「狭いけれど、管理が楽になりました」

 

掃除の範囲も減り、生活はむしろ安定したといいます。

 

長年暮らした家を売却する決断は、簡単に下せるものではありませんでした。佐々木さんは「ここで子どもを育てましたから」と振り返ります。それでも、夫婦だけで広い家を維持していくには体力的にも精神的にも限界がありました。振り返れば、「家を守ること自体が目的になっていた気がする」と感じることもあったといいます。

 

公営住宅へ住み替えたことで、生活は以前よりシンプルになりました。高齢期の住まいは一度決めたら終わりではなく、身体状況や家族関係の変化によって見直しが必要になることもあります。佐々木さんも「もっと早く決断してもよかったのかもしれません」と静かに話します。

 

娘との関係はまだ元通りにはなっていません。それでも住環境が整ったことで、日々の生活は少しずつ落ち着きを取り戻してきました。持ち家があることは安心材料の一つですが、維持できる環境でなければ負担になる場合もあります。「家があるから大丈夫」と思っていても、状況は年齢や生活環境によって変わっていくものです。

 

住まいとは単に建物を所有することではなく、日常生活を無理なく続けられる環境であることが重要です。佐々木さん夫妻はその現実を、住み替えという選択を通じて受け止めることになりました。

 

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