(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢期の生活は、年金や資産だけでなく家族との関係にも大きく左右されます。内閣府『令和6年版 高齢社会白書』によると、65歳以上の単身・夫婦のみ世帯は増加を続けており、家族の支援が得られない状況で暮らす高齢者も少なくありません。また総務省『家計調査(2024年)』では、高齢夫婦のみの無職世帯は平均で月約3.4万円の赤字となっており、住宅維持費などが生活を圧迫するケースもあります。こうした背景の中で、住まいを手放す高齢者も一定数存在しています。

娘から届いた一本のLINE…残された「最後の言葉」

「もう関わらないでください」

 

その一文を見たとき、佐々木さん(仮名・74歳)はスマートフォンを持ったまま動けなくなりました。送り主は、長年疎遠になりつつあった一人娘でした。

 

佐々木さん夫妻は郊外の持ち家で暮らしていました。住宅ローンはすでに完済しており、年金収入は夫婦合わせて月18万円ほど。生活は決して豊かではありませんが、家賃がかからないぶん何とかやりくりできている——そう思っていました。

 

しかし、実際の生活は少しずつ崩れていきます。

 

数年前、夫が体調を崩して仕事を辞めました。大きな病気ではありませんでしたが、外出の機会が減り、日中のほとんどを自宅で過ごすようになります。

 

「買い物も面倒になってしまって」

 

気づけば、食事はコンビニ弁当が中心になりました。台所を使う回数が減り、床には空き缶や弁当容器が積み重なっていきます。

 

掃除も後回しになりました。

 

「そのうち片付けようと思っていたんです」

 

しかしその「そのうち」はなかなか来ませんでした。

 

娘は数年前まで定期的に実家を訪れていました。掃除を手伝い、食材を差し入れし、病院の付き添いもしていました。

 

しかしある日、部屋を見た娘が言いました。

 

「どうしてこんな状態になるまで放っておいたの?」

 

床には空き缶が転がり、弁当容器が積み上がっていました。冷蔵庫の中も整理されていません。

 

「ちゃんと片付けるから」

 

そう答えたものの、状況は大きく変わりませんでした。

 

その後、娘の訪問は徐々に減っていきます。そして届いたのが、冒頭のLINEでした。

 

もう関わらないでください。

私にも家庭があります。

これ以上、実家の問題を抱えられません。

 

短い文章でしたが、その内容は明確でした。娘は、家族であってもすべてを背負うことはできないという限界を示そうとしていたのかもしれません。

 

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