日本の家計資産状況
今の日本で、最も多くの家計資産を抱えているのはどの世代でしょうか?
働き盛りの40代でも、現役を退いた直後の60代でもありません。正解は、「世帯主が80歳以上の世帯」です。
総務省の「2019年全国家計構造調査」によれば、80歳以上の世帯主の世帯が保有する家計資産(金融資産と宅地・住宅資産の合計)の平均額は約4,386万円。これは、全世代のなかで最高の数字です。
金融機関において、大口預金者の多くが高齢層であることはよく知られています。しかし、この数字を単なる「豊かな財産」として片付けることはできません。見方を変えれば、使い道を失ったまま積み上がってしまったものともいえるからです。
【FPの視点】出口で渋滞する資産の正体と、子への「負のギフト」
なぜ、Tさんのような後悔が生まれるのか。「全国家計構造調査」のデータを深掘りすると、日本人が抱える構造的な欠陥が見えてきます。
1. 「不動産という名の重荷」を遺す
80代以上の世帯主の家計資産平均は4,386万円ですが、その内訳の約半分は「不動産」です。相続税課税の心配のない多くの人にとって、不動産は処分に困る「負動産」化の懸念があります。相続する世代の子供たちの多くはすでに自分の生活拠点を持っています。現金と違い、不動産は「均等に分ける」ことが難しく、親亡きあとの兄弟関係に亀裂を入れる火種になることさえあります。
2. お金の「賞味期限」に対する無知
お金を価値ある体験に変えるには、子供の年齢や自身の健康寿命に紐づいた「賞味期限」があります。自分で稼いだお金は、自分の代で計画的に使い切る。各年代でしか得られない感動や笑顔のために、計画的に使い切ることこそが、家族全員を幸せにする出口戦略です。
3. 将来への不安を消す「ライフプラン」がない
多くの人が抱く「際限のない不安」は、いつ、いくら使っても大丈夫かという「地図(境界線)」がないことに起因します。ライフプランの本質は、将来のための我慢ではなく、備えを「見える化」することで、確信を持って今にお金を投じるための判断基準を得ることにあります。
現役世代の「今しかできない思い出」の重要性
将来への不安から、つい「貯蓄第一」で今を犠牲にしていませんか?
30代~50代の現役世代にこそ必要なのは、ライフプランという「地図」を持って、今を精一杯楽しむことです。
ライフプランは単なる節約の計画ではありません。将来の備えを「見える化」することで、「いつ、いくら使っても大丈夫か」という安心感を得るための道標です。この確信があれば、家族との旅行や食事といった「今しかできない体験」に、迷いなく投資できるようになります。
また、親が自立し、自分の人生を全力で謳歌する姿を見せることは、子供にとって金銭的な遺産よりも価値のある「生きる指針」というギフトになります。
家族で笑い合える思い出を積み上げること。そして、確かな戦略を持つことで、日々の節約も「未来を輝かせるための賢明な選択」へと変わります。ライフプランという地図を手に、一生消えない心の資産を今から築いていきましょう。
桐山 昌也
株式会社ライトオブライフ
代表/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
