久しぶりに再会した弟、切り出された「公平な分配」の要求
相続の話し合いのため、Aさんは久しぶりに弟と顔を合わせました。弟は東京の大手企業に勤めており、いまは海外出張も多く、忙しいサラリーマンです。以前よりも精悍さを増した弟は、仕事も順調なようで、年収も随分と上がっている様子でした。
父の遺産は多くはありませんでした。先祖代々の土地に建つ自宅と、普通預金。預金はこれからかかるであろう母の介護費用を考えると、心細い金額です。相続財産のうち、多くを占める財産が自宅なので、Aさんは「弟と公平にわけたいもののどうしたらいいか」と頭をずっと悩ませました。当然、自宅はAさんはこれからも住み続けたいので、売ることもできません。
積もる話もそこそこに、弟はあらかじめ考え抜いてきた案を切り出しました。
「ここの自宅をお兄さんが相続するというのなら、その半分を現金でもらえないか」
Aさんは展開の早い話で少しびっくりしました。弟はあらかじめいろいろ考えてきたようです。
確かに、法的には兄弟で均等にわける権利があります。しかし、この土地は立地条件がよく、評価額に直すと3,000万円にもなるのです。Aさんはこれからもこの家に住み続けたい。けれど、弟が提示した「半分」の金額は、Aさんが老後のためにコツコツ積み立ててきた貯金をすべてはたいても、到底足りない額でした。
悩んだAさんは、「ならば自宅を2分の1ずつの共有名義で相続してはどうか」と提案しました。しかし、そこには相続税という大きな壁が立ちはだかります。
自宅の相続は、同居していた家族(Aさん)と同居しておらず自分自身の自宅をもっている家族(弟)とで、相続税の評価が大きく違ってくるのです。相続税には「小規模宅地等の特例」という制度があり、同居していた家族が自宅を相続する場合、土地の評価額を最大80%も減額できます。しかし、弟はこの特例が使えません。
弟も納得はしませんでした。自分が住むわけでもない家の名義を持ち、利用もできないのに税金だけ払わされるメリットを感じなかったからです。
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