想定よりも年金額が少ない人
「思ったよりも年金額が少なくて驚いた」このような感想を述べるのは、Aさんのように、独立開業された人だけではありません。そのほかにも、たとえば以下のようなケースがあげられます。
・高収入で、年金に反映できる標準報酬月額を大きく超えている
・年収に対し、賞与やインセンティブの占める割合が大きい
・パート/社員だと思っていたら業務委託で働いていた
・海外赴任中に任意加入していなかった
・減額のインパクトを確認せず、繰上受給した
年金制度は複雑なため、年金制度の仕組みを理解していないと、老後になって「こんなはずじゃなかった」という事態になる可能性があります。
想定より少ないとわかったら…4つの対応策
年金は多くの人にとって老後生活の主な収入源となるため、年金額によって老後生活の見通しが変わることも。ここでは、年金が少ないとわかったときに知っておきたい4つの対応策をご紹介します。
ステップ1:まずは現状把握…年金の受け取りスケジュールと生活費を見える化
これから受け取ることができる年金の種類やスケジュールを確認しましょう。年金と一口にいっても、老齢基礎年金や老齢厚生年金、遺族厚生年金、企業年金からの老齢給付など、さまざまな種類があります。それぞれいつからいつまで、また、いくらくらい受け取れるものか。まずはねんきん定期便や年金事務所での相談を活用し、自身が今後受け取れそうな年金を丁寧に確認していきましょう。
受け取りスケジュールがわかったら、次は、毎年必要になる生活費の洗い出し。住居費、食費、光熱費、医療費、交際費など、さまざまな支出がありますが、年ベースで金額を書き出すことで、「年金だけではいくら不足するのか」が明確になります。
ステップ2:必要な取り崩し額を計算
毎年の生活費から年金額を差し引けば、毎年の不足額がわかります。たとえば生活費が年間300万円、年金が144万円なら、不足額は156万円です。想定される老後期間をかけ算して、老後に必要な総額を試算しましょう。たとえば、65歳から95歳までなら、老後期間は30年間です。毎年156万円不足するなら、必要な取り崩し額は4,680万円となります。
ステップ3:ライフプランと照らしあわせ、取り崩しに充てられる金額を確認
保有資産から、今後予定される大きな支出(リフォーム費用、子どもへの援助、介護費用、葬儀費用など)を差し引きます。残った金額が、取り崩せる資産です。この金額がステップ2で算出した必要額を上回っていれば、ひとまず安心でしょう。
ステップ4:取り崩せる金額が足りなかったら…キャリアプランや支出を見直す
取り崩せる金額が不足するなら、対策が必要です。まだ働くことが選択肢として入れられる状態なら、厚生年金に加入できる働き方への転換や、年金受給開始年齢の繰下げも検討してみてください。固定費の削減や住み替え、ライフイベントの見直しなど、支出面の見直しも有効です。
年金+自助努力で老後の安心を築く
Aさんのケースが示すように、年金額は必ずしも「生涯にわたって稼いだ総額」に比例するわけではありません。むしろ、「どの制度に、どれだけの期間加入し保険料を納めていたか」によって決まります。独立開業や業務委託への転換は、キャリアの選択肢として魅力的である一方、年金という観点では大きな分岐点になるのです。
Aさんは幸い、個人年金保険や養老保険などを若いころから続けており、金融資産1億円という形で老後の安心を確保していました。しかし、もし私的な準備がなければ、老後資金には深刻な不足が生じていた可能性も。早い段階で自分の年金見込み額を把握し、必要に応じて働き方や資産形成の計画を見直すことは重要です。
年金は老後生活の土台ですが、それだけに頼る時代ではなくなりつつあります。公的年金に加えて、iDeCoや企業型確定拠出年金、NISAなど、自助努力による資産形成の選択肢も広がっています。まずは自分のキャリアやライフプランを振り返り、必要な備えを確認することから始めてみませんか。
内田 英子
FPオフィスツクル代表
ファイナンシャルプランナー
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