当期純利益がプラスでも健全とは言い切れない
Q:「当期純利益」がプラスならいい会社だといえる?
会社の最終的な利益は「当期純利益」ですが、当期純利益がプラスになっていれば手放しでほめられるかというと、決してそうではありません。その会社が置かれている状況は、当期純利益だけで判断するのではなく、「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前当期純利益」「当期純利益」の5つの利益のバランスから判断する必要があります。
損益計算書では、上から順に売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期純利益、当期純利益となっており、それを図であらわすと次のようになります。
上の図のような利益バランスは、最も理想的といえます。売上総利益に比べて営業利益がグンと少なくなるのは、金額の大きな「販売費及び一般管理費」が引かれているためであり、何の問題もありません。
税引前当期純利益から当期純利益へも、税引前当期純利益をベースに法人税等が計算され、それを引いて当期純利益が計算されるので、一定割合減少するのはあたり前のことです。
営業利益から税引前当期純利益までは徐々に利益が減少していますが、これはあくまでも一例です。基本的には営業利益から当期純利益までは、あまり変化せず推移するのが理想的です。
営業利益に比べて経常利益がグンと少ない場合は・・・
今度は、問題を抱えているタイプの利益パターンをいくつか紹介しましょう。まずは、借金依存体質の会社の利益パターンです。
特徴は、営業利益に比べて経常利益がグンと少なくなっている点です。これは「営業外費用」が多額に計上されていることが原因です。営業外費用のおもな項目は支払利息なので、このような利益パターンになっている会社は、借金が多すぎることが考えられます。
借金が多い会社では、稼ぎ出したお金のほとんどを借金の返済や利息の支払いに充てなければならないので、新規の投資が行えていない可能性があります。
稼げているうちに借金依存体質を抜け出すことができればよいですが、このままでは近い将来会社が傾いてしまう可能性もあります。
また、この利益パターンで考えられるもうひとつのケースは、資金運用の失敗です。営業外費用には、株式などの評価損や売却損が計上されるので、資金運用で大きな損失を出してしまった可能性があります。このような場合、会社として資金運用のあり方を見直せば、同様の損失を出すことはないでしょう。
経常利益では赤字、当期純利益がプラスの場合は要注意
次に、つじつま合わせに利益を出しているパターンを見てみましょう。
特徴は、営業利益が少なく(あるいは営業利益の段階から赤字)、経常利益の段階では赤字になっているにもかかわらず、税引前当期純利益ではプラスになっているケースです。このようなケースは特に注意が必要です。
というのは、最終利益である当期純利益はプラスなので、そこだけを見て判断すると、この会社は大丈夫ということになってしまうからです。実際は営業利益が少なく、経常利益では赤字になっているので(経常損失)、この会社は決して健全とはいえません。
なぜ、経常利益の段階で赤字だったものが当期純利益ではプラスに転じたのかというと、多額の特別利益を計上しているからです。特別利益には、臨時的な収益が計上され、おもに固定資産売却益などがあります。つまり、経営者がどうしても当期純利益をプラスにしたいと思い、会社が保有していた土地などの固定資産を売却して、当期純利益をプラスにしたと考えられます。
<経営者が利益を操作する理由>
当期純利益だけで会社のよし悪しを判断すると、小手先の操作にだまされる可能性もある。途中の利益もしっかりと見て判断することが大事である。
営業利益の段階で損失・・・会社の末期である可能性も
最後に、儲けを出すしくみがつくられていない利益パターンを見ていきましょう。
営業利益の段階からすでに損失になっているので、商売の体をなしていないと思われます。儲けを出すしくみができていないということは、会社を立ち上げてまもない状態か、もしくは会社の末期であると思われます。
また、営業損失を上回る経常損失となっているので借金も多く、利息の負担が重くなっていることも読み取れます。資金繰りも苦しいはずなので、早期の借金の返済もむずかしいと思いますが、このままではたとえ営業利益がトントン(プラスマイナス0になること)か、少々プラスになったとしても、利息の負担により、経常利益や当期純利益をプラスにすることはむずかしいでしょう。
このような状況からふつうに利益の出る体質にもっていくのは、至難のワザです。いったん会社を清算して、再起を期す方が賢明なケースといえます。