「子どもに負担を背負わせる未来」を想像してしまった
由美さんに、墓参りそのものを否定する気持ちはありませんでした。彼の実家は千葉なのでお盆の帰省で墓参りすることも受け入れていました。
「お墓を守ること自体は大切だと思います。でも、“そのために子どもが必要”という発想が怖くなってしまった」
もし子どもが生まれたら——。“家を守る役目”を当然のように背負わせるのだろうか。「これはお墓のことだけではないかもしれない。彼はことあるごとに『家のため』と言ってくるに違いない」
由美さんはそう考え、関係を深めることができなくなりました。
「価値観が違うと感じた瞬間でした」
2割は「墓じまいをするつもりはない」
墓をどうするかという問題は、今や個人の家庭だけの話ではありません。
東京都が2025年に公表した「墓じまいについて」というアンケートによると、「自分や家族が利用できるお墓がある」と答えた人のうち、“墓じまいをするつもりはない”と明確に回答した人は20.2%でした。一方で、「今は考えていないが、今後考えるかもしれない」(45.3%)が4割半ばで最も高く、以下、「今すぐではないが、墓じまいすることを考えている、検討したい」(21.4%)と続き、墓のあり方については柔軟に考える層が一定数存在していることが分かりました。
社会全体が、従来の家制度や継承のあり方を見直しつつある過渡期にあるのです。
「子ども=家を継ぐ存在」という発想への違和感
由美さんがショックを受けたのは、墓そのものではありません。
「“子どもがほしい理由”が、家を守るためだったこと」
結婚は、二人で新しい家庭を築くものだと思っていました。しかし、彼の発想は、“家の延長線上に結婚がある”という印象だったといいます。
「私は誰かの家を守るためのパーツなんだろうか、と感じてしまって」
それ以降、由美さんは婚活を休んでいます。
年収700万円。都内在住。安定した職業。婚活市場では“好条件”に入る男性です。それでも、価値観のずれは埋まりませんでした。
「年収や学歴よりも、“何のために家族をつくるのか”が一番大事なんだと気づきました」
墓を守ることを重んじる人がいてもいい。墓じまいを選ぶ人がいてもいい。ただ、その価値観が“絶対”になった瞬間、誰かに重荷になることもある。
「時代に合わせて変わる柔軟さが、私はほしいと思ってしまったんです」
由美さんはそう言って、静かに笑いました。
[参考資料]
東京都「墓じまいについて」
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