(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢期の「地方移住」や「住み替え」が注目を集めています。生活費の節約、自然環境、のんびりした時間…。一見すると理想的な老後に思える“田舎暮らし”ですが、実際に移住した高齢者のなかには、思いがけない現実に直面するケースも少なくありません。

「お金には余裕があるけど、心は少しさびしい」

「年金が月21万円あるから、金銭的にはたしかに困ってはいないんです。でも、都会にいた頃の“ちょっと誰かに会える安心感”はなくなってしまいました」

 

総務省『家計調査(令和5年)』によれば、高齢夫婦のみの無職世帯の消費支出は月約25.6万円。可処分所得は約22.2万円で、実質的には月3.4万円の赤字が生じています。

 

「地方に行けば、支出は減る。そう思っていたけれど、予想以上に光熱費や車の維持費がかかるんですね。都市部にいた頃より、支出は減ったけど“余裕”とは少し違うかな…」

 

と幸子さん。

 

「帰るとき母が“また来てね”じゃなくて、“大丈夫だよ、心配しないで”って言ったんです」

 

その言葉が妙に引っかかったという絵美さん。数日後、市の包括支援センターに電話をかけ、地域の支援制度や見守り体制について相談を始めたといいます。

 

今回のように、経済的には余裕があっても、社会的なつながりや生活の機動力が失われることで、孤立や不安が生じるケースは少なくありません。

 

「後悔しているわけじゃないの。でもね、夢と現実は、ちょっと違ったかな」

 

海を見つめながらそうつぶやいた幸子さん。“理想の老後”を叶えようと地方へ移住した夫婦の暮らしは、金銭的には成り立っていても、心の余白に静かな陰りを落としていたのかもしれません。

 

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