損害賠償の支払を求める反訴を提起した被告
【ケース】
監理契約、工事請負契約の成否と設計の瑕疵の存否
東京地裁平成25年11月26日判決(平成24年(ワ)第25719号)
LEX/DBインターネット25516156
【争点】
1 監理契約、工事請負契約の成否
2 設計の瑕疵の存否
【判決の内容】
●事案の概要
店舗の内外装の企画及び設計を業とする原告(反訴被告)X(以下「原告X」という)は、喫茶店を経営する被告(反訴原告)Y(以下「被告Y」という)との間で、平成23年3月10日、喫茶店店舗(以下「本件店舗」という)の内装工事に係る設計・デザインに関する契約(以下「本件契約」という)を報酬額117万6000円(支払方法は、初回、施工開始日、竣工日に分割して各3分の1を支払うとの内容)で締結し、その後原告Xは平成23年6月30日ころまでに本件店舗の内装デザインに係る設計図面を作成し、原告Xが被告Yに紹介した施工業者である補助参加人等は平成24年1月中に本件店舗の内装工事を完成させて被告Yに引き渡したが、被告Yが本件契約の最終回の報酬残金を支払わないため、原告Xが、被告Yに対して、報酬残金の支払を求めて訴訟を提起した(以下「本訴」という)。
これを受け、被告Yは、原告Xに対して、原告Xとの間では設計のほかに、工事監理に関する契約と工事請負契約も締結しており、本件店舗の工事内容に瑕疵一覧表記載の瑕疵があるとして、工事請負契約の瑕疵担保責任あるいは設計ないし工事監理契約上の債務不履行に基づいて損害賠償の支払を求める反訴を提起した(以下「反訴」という)。これに対して、原告Xは、被告Yとの間で工事監理に関する契約及び工事請負契約は締結していない、そもそも瑕疵はない等としてこれを争った。
原告の報酬残金の請求を全て認容
●判決要旨
裁判所は、原告Xの報酬残金の請求を全て認容するとともに、大要以下のとおり判示して、被告Yの損害賠償請求を全て棄却した。
本件店舗の内装工事については、被告Yと補助参加人との間で建設工事請負契約が締結されていること、被告Yが消防署長宛てに提出した防火対象物使用開始届出書の「施工者」欄にも補助参加人が記載されていること、本件店舗の内装工事のうち、厨房工事等については他の協力業者が施工しており、その見積書も被告Y宛てになっていること、工事代金は原告Xではなく各施工業者に支払われていること等からすれば、原告Xと被告Yとの間で本件店舗の内装工事に係る請負契約が締結されたとは認められない。
また、工事監理とは、「その者の責任において、工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認すること」をいうところ(建築士2条8項)、原告Xと被告Yとの間で、原告Xが上記業務を遂行することが合意されたとの事実を認めるに足りる直接的な証拠が見当たらず、原告Xがデザイン・設計以外に担当した事務は、施工業者ないし協力業者を選定して被告Yとの請負契約を仲介した程度であり、本件契約に、工事監理まで含まれていたと認めることはできない。なお、原告Xが被告Yに交付を求めた原告X作成に係る発注書には発注項目として「○○カフェ設計監理」と記載されているが、他方で、同発注書の明細欄には「設計管理料」とあることからすれば、同発注書をもって原告Xが工事監理を行う意思も有していたとまでは認められない。
瑕疵一覧表で被告Yが主張する瑕疵のうち、瑕疵番号1、2及び7以外については内装工事における施工上の瑕疵をいうものであり、その余の点につき判断するまでもなく理由がない。瑕疵番号1、2及び7についても、設計契約上の瑕疵と認めることはできない。