前回は、不動産管理会社が勧める「家賃保証」には注意が必要な理由を説明しました。今回は、不動産管理会社が推奨する「家賃保証」のカラクリを見ていきます。

保証料として10~20%程度の手数料を支払う

今回は、「家賃保証」の裏にはどんなカラクリがあるのかを詳しく見ていきます。

 

「家賃保証」とは通称で、正式名称は「転貸条件付き賃貸借契約」になります。その名の通り、オーナーが一括借り上げをする管理会社に、第三者への部屋の転貸を許可するという契約です。

 

その際、管理会社は満室状態での全家賃収入から、保証料として10~20%程度を差し引き、残りをオーナーに支払うことになります。よって、直接入居者に部屋を貸し出す家賃と比べ、入金される家賃は低くなります。

 

とはいえ、空室のリスクが解消され、マンション、アパートの管理のわずらわしさからも解放されるなら、「多少の手数料を払ってもいいや」と思う人も多いかもしれませんが、注意するべきはここからです。

一定期間ごとに賃料は見直しされる!?

一つ目の注意点は、一定期間ごとに賃料見直しが実施されることです。

 

家賃“保証”という言葉から、「保証期間中は最初に決めた賃料水準が続く」と誤解しがちですが、そうではありません。保証期間は一般的に10~30年程度ですが、たとえ期間中であっても、定期的に家賃の見直しが行われ、管理会社から値下げを求められることもありうるのです。

 

たとえば、契約書内の条文に、

「賃料は家賃査定書に基づいた金額とする」

「賃料改定は賃料記載日より2年間経過ごととし、賃料改定日の6カ月前までにオーナーと管理会社が協議を行い、賃料の改定日までに賃料の改定を行う」

とあったとします。

 

最初の条文の内容は、周辺の家賃相場から算出された賃料に設定するということです。空室リスクを避けるためには、当然の内容と思われますが、ここに保証家賃引き下げの伏線があります。

 

次の条文を見ると、2年ごとに賃料を見直し、管理会社が現在の賃料水準では入居者の確保が難しく、採算がとれる稼働率の維持が困難と判断した場合、契約した賃料の引き下げを求めることができる、とされています。

 

さらに、「本契約の賃貸借条件を維持することが困難な状況が生じた場合、オーナーと賃料保証会社は協議を行い、賃料改定日以前でも賃料を改定できる」という項目があれば、実質的にいつでも賃料の引き下げが可能ということになります。

 

「○年一括借り上げ」「家賃保証」といった聞こえがいい言葉と裏腹に、常に賃料が減額されるリスクがあるとは、もはや“保証”でもなんでもないといってもいいでしょう。

修繕工事のタイミングで切れる長期契約にも要注意

また、10~30年という長い契約期間を設定している会社の方が安心感があるようですが、そこにもウラがあります。

 

新築物件の場合、妥当な家賃設定さえすれば、入居者の確保はそれほど苦労しません。問題なのは、築年数が経過し、外見、内装に老朽化が目立ち始めるようになってからです。つまり、入居者確保が難しくなり、大きな修繕工事をしなければならない頃に契約が切れるシステムになっているのです。

本連載は、2016年10月9日刊行の書籍『あなたの資産を食い潰す「ブラック相続対策」』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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秋山 哲男

幻冬舎メディアコンサルティング

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