自宅兼賃貸アパートの評価額が約2倍に!?
さて、ここまでいくつかの要注意トークについて解説してきました。もう一点、賃貸経営を検討する際に、注意すべきポイントがあります。それは、税制とは頻繁に変わるものである、ということです。
たとえば、都心部で自宅兼賃貸アパートを所有するオーナーが大打撃を受けたのが、2010年の「小規模宅地等の特例」の見直しでした。
「小規模宅地等の特例」とは、一定の要件を満たす居住用・事業用の宅地については、土地の評価を80%減額、賃貸物件については50%減額できるもので、居住用については、残された家族が納税により、住む家がなくなることがないように配慮された制度です。
2010年の税制改正より前は、賃貸併用住宅についても、一部でも自宅ならば建物敷地全体に80%の評価減が適用できたため、賃料収入でローンを返済でき、固定資産税も軽減できるとして、特に地価の高い都心部で、賃貸併用ビルを建設する動きが加速化しました。ところが、2010年の改正により、賃貸部分と自宅部分を分けて計算することとなり、賃貸部分については50%減が適用されることになりました。
たとえば、土地評価約2億3000万円の自宅兼賃貸アパート用敷地(200㎡)だとすると、以前であれば敷地全体に80%減が適用され、評価額は約4600万円で済みました。ですが、建物全体の5分の1が自宅で、5分の4が賃貸だったすると、それぞれの評価額は約920万円、約9200万円となり、総額では約1億円と、約2倍の評価額になってしまうわけです。
「一部でも自宅にすれば、評価減になりますよ」と勧められ、自宅兼賃貸アパートを建設したオーナーにとっては、想定外の災難です。しかし、税制が改正されて節税効果がダウンしたからといって、住宅メーカーが責任をとってくれるわけではありません。
相続税対策は「一度やったら終わり」ではない
近年、話題になったタワーマンションの上層階を買い、実勢価格と相続税評価のかい離を狙う、いわゆる“タワマン節税”にも、今後、本格的にメスが入ることが予想されます。
相続対策は一度やったら、終わりではありません。面倒でも、時代の趨勢(すうせい)や税制改正の動向もにらんだ上で、適切な対処をしていく必要があります。ただし、税制の改正を踏まえた不動産の特例適用などに関しては、自分で新たな対処法を講じようにも、そのハードルは高いと言わざるをえません。
だからこそ、「商品を売る」だけを目的とする営業マンの言い分だけを全面的に鵜呑みにし、頼り過ぎるのは非常にリスクが高いのです。