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金融市場で売買される水資源
2020年12月、アメリカのシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)で、水の先物取引が正式に開始されました。これは、原油や小麦と同様に、水という資源が金融市場で売買されるようになったことを意味する象徴的な出来事でした。
先物取引とは、将来の価格変動を見越して、事前に売買の契約を交わす仕組みです。農業経営者や水関連企業にとって、価格の乱高下による損失を避けるためのリスク管理手段として活用される一方で、市場参加者には投資目的のプレーヤーも多く含まれます。
この取引に用いられる指標は、「ナスダック・ベルス・カリフォルニア・ウォーター指数(NQH2O)」と呼ばれ、カリフォルニア州内の5つの主要水市場における現物取引価格をもとに算出されており、州西部における水の需給バランスを示す代表的な指標となっています。
カリフォルニアは農業・都市・自然保全の間での水の争奪がとくに激しい地域であり、慢性的な干ばつと水ストレスに悩まされてきました。そのような背景から、水の価格変動リスクに備えるヘッジ手段として、先物市場の整備が求められてきたのです。
先物契約においては実際に水が運ばれたり引き渡されたりするわけではなく、あくまで価格の指標として「水の価値」を数値化し、それをもとに投資や取引が行われます。つまり、水はここで「実物資源」ではなく、「抽象化された金融商品」として扱われているのです。
CMEによると、2021年3月時点ではNQH2Oは1AF(エーカーフィート。1エーカー〔約4047平方メートル〕の土地に1フィート〔約30・48センチメートル〕の水を張ったときの水量。約123万リットル)あたり530ドル前後で推移していましたが、2021年5月には870ドルを超えました。わずかな期間に水の価格が1・6倍に上昇しています。
この動きには、実体経済における水不足や干ばつの影響に加え、投機的資本の流入も影響していたと見られています。
2024年以降、NQH2O指数そのものへの市場参加はやや落ち着きを見せていますが、水資源を「投資対象」とみなす流れは続いています。サステナビリティ投資や気候変動への適応戦略の一環として、水関連資産をポートフォリオに組み込む動きは、欧米の機関投資家を中心に拡大しています。
橋本 淳司
アクアスフィア・水教育研究所 代表
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