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地面師被害に遭うのは「不用意だから」ではない
地面師とは、他人の不動産の所有者になりすまして、売買代金や融資金をだまし取る詐欺の一種です。近年放映されたドラマや、現実に起きた大きな事件の報道をきっかけに、一般の人にも知られるようになりました。
注意が必要なのは「地面師詐欺は不用意だから遭うわけではない」という点です。一見すると取引の形式も整い、書類もそれらしく揃っているけれども、決済をせかされて心理的に判断が鈍る、そんな状況で起こります。
やり取りについて「なんとなく違和感はあるが、決定打はない」状態で手続が進み、契約をしてしまう。これが地面師詐欺の最も危険な局面です。
結論を先に言うと、地面師に狙われた取引を絶対に防ぐことは困難です。だからこそ、狙われにくくする、疑わしい取引を中断できる状態を作ることが重要なのです。
地面師が目をつける「不動産」の特徴、糸を引く「取引」の特徴
地面師に狙われるのは、偶然でも、運が悪かったからでもありません。地面師は「成功確率が高い条件」が揃った案件に目をつけます。地面師に狙われやすい不動産と、持ち掛けられたときに買主が注意すべき取引の特徴をまとめます。
【不動産の特徴】
●長年名義が動いていない
●相続登記が未了のまま
●所有者が高齢で、管理の手が薄いように見える
●物件が高額/面積が大きい
●担保(抵当権等)が付いていない
●空き地・空き家のように見え、所有者の生活実態を感じにくい
●所有者が物件近くに居住していない(買主が所有者に会いにくい)
【取引の特徴】
●相場より不自然に安い(買主側が冷静さを失いやすい)
●現金取引を求める、または決済を急かす
●売主本人が前面に出ず、代理人が主導する
●権利証や本人確認書類の提示が直前まで遅い/コピーしか出ない
●不自然な事情説明が繰り返され、確認を嫌がる
このような条件が複数重なると、地面師案件である可能性が上がります。共通しているのは、「不動産の管理が手薄である」こと、そして取引においては「所有者の本人性の確認が難しい」という特徴があります。
地面師が目指すのは、それらしい書類をそろえることではなく、いかにして人の注意や疑念を振り切るか、という点なのです。
「権利証がない取引」に潜むリスク
不動産の名義変更では、通常、権利証(登記済証・登記識別情報)、実印、印鑑証明書等が確認されます。これらは、「所有者本人の意思で手続が行われている」と判断する重要な材料です。
一方で、実務上、権利証を提示できないケース(紛失など)もあります。その場合に利用され得る手段として、専門職による本人確認情報の提供や、公証人の認証、法務局の事前通知手続などがあります。
ここで注意したいのは「権利証がない=違法ではない」一方で、なりすまし側にとってもここが突破口になり得るという点です。
つまり、権利証がない取引は、正当な事情でも起こり得ますが、同時に、本人性の確認が一段難しくなる局面でもあります。だからこそ、当事者は「通常より慎重な設計」に切り替える必要があります。
「防ぎきれない」ことを前提として、対策を立てる
地面師対策は、万能の一手がある分野ではありません。現実的な方針は次の2つです。
●狙われにくい状態を作る(入口で避ける)
●疑わしい取引を中断できる仕組みを持つ(途中で止める)
以下、所有者側/売買当事者側に分けて示します。
●所有者側の対策(狙われにくい状態を作る)
①相続登記を放置しない
相続登記未了は、本人性確認の難しさと管理の薄さを同時に示してしまいます。名義を整えることは、対外的に「責任者が明確な不動産」に戻す意味があります。
②空き地・空き家の“管理のサイン”を消さない
地面師は、所有者が現地に関与していない物件を好みます。定期的な点検、最低限の手入れ、近隣との接点など、管理の痕跡は抑止になります。
③重要情報を安易に渡さない
権利証・実印・印鑑証明書等は、取り扱いを誤ると被害につながり得ます。「先に渡して」と言われたときに、渡してよい理由と代替策が説明できない相手は、警戒すべきです。
●買主側・取引当事者側の対策(疑わしい取引を中断できる仕組みを持つ)
①「急がせる取引」は、必ず疑う
決済を急かす取引は、本人確認・書類確認・現地確認の時間を奪います。「期限がある」「今週中に」などの言葉が出たら、確認項目を増やす合図です。
②司法書士は自分で選ぶ
不動産売買の実務では、所有権移転の司法書士報酬を負担するのは買主側であるケースが一般的です。そのため、多くの場合、司法書士の選定権限も買主側にあります(取引の形態により例外はあります)。実際の取引では、不動産会社が「いつもの司法書士」を紹介することも少なくありませんが、それに必ず従わなければならないわけではありません。当事者が自衛するなら「誰が確認するか」を自分で確保することが重要です。司法書士は、登記申請の技術者であると同時に、決済局面の本人性確認の最終関門でもあります。
③書類の提出タイミングが遅い場合は、条件を出す
権利証や本人確認書類の提示が直前まで出ない、コピーしか出ない、説明が曖昧といった場合、買主側は「確認できないなら決済しない」という強い姿勢で臨むべきです。「よい条件の取引を逃したくない」という気持ちに呑まれないことです。
決済前に確認したい「危険なサイン」のチェックリスト
取引において、次の項目に該当するものが多くなるほど慎重な判断が必要です。
□ 売主本人が一度も前面に出ない/会えない
□ 相場から見て不自然に安い
□ 現金取引を強く求める
□ 決済時期を不自然に急かす
□ 権利証・印鑑証明・本人確認書類が直前まで出ない
□ 説明に「もっともらしい事情」が多く、確認を嫌がる
□ 物件が長年名義変更されていない/相続登記未了
□ 空き地・空き家で、所有者の関与が見えにくい
□ 担保が一切付いておらず、手続が不自然に早い
このチェックリストは「詐欺の断定」に使うものではありません。「確認を厚くするサイン」として使ってください。
安全な取引とは、「冷静に立ち止まることができる」取引
地面師詐欺は、書類の出来栄えや話術だけでなく、当事者の心理を突いてきます。「ここで止めたら機会損失だ」「疑ったら失礼では」という感情が最も危険です。
だからこそ取引で本当に重要なのは「違和感があるときに、迷わず立ち止まることができるか」ということです。
確認を嫌がる相手に対し、「中断する」という選択肢を持ち、臨むことができるのか。ここに尽きるといえるでしょう。
不動産取引は高額で、失敗のやり直しが効きにくい分野です。不安があるときは、手続の前に立ち止まり、専門家に相談して確認の設計を組み直す。これが、最も現実的な地面師対策です。
加陽 麻里布
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