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会社設立において「旧姓使用」は可能か
日本では選択的夫婦別姓の導入が議論されていますが、働く女性の場合、旧姓を使いたいという声は多いようです。これまで築いてきた知名度や信用の維持など、ビジネス上の様々な事情があると推察されます。
実際に、筆者の事務所へ寄せられる相談にも「取引先に名前が変わったことを説明するのが大変」「結婚後も旧姓のままのほうが仕事がスムーズ」といった理由で、旧姓での起業を考える方が一定数います。
現行法上において、会社設立の際は登記に本名の使用が必要です。したがって、旧姓のみの登記はできません。
しかし、登記簿上で本名に加えて旧姓を併記することは認められています。これにより、事業活動において本名とあわせて旧姓を記載できるため、取引先に説明がしやすくなるなど、事業活動で補助的に旧姓を活用することが可能です。
旧姓を併記できるものとしては、下記があります。
①会社の代表者名(登記簿)
②マイナンバー
③不動産登記簿
④銀行口座(金融機関によります)
旧姓併記のメリット
旧姓併記の最大のメリットは、これまで築き上げた信用や実績を維持できる点にあります。取引先の混乱を避けられることに加え、結婚や離婚後もスムーズに業務を継続できるという利点もあります。
★メリット
仕事上の信用・実績の維持
取引先との混乱の回避
結婚・離婚後もスムーズな業務継続が可能
旧姓併記のデメリット
一方で、公式書類に旧姓のみを用いることはできず、本名の使用が必須です。したがって、旧姓を使える場面は限定的だといえます。役所や金融機関での手続きが複雑化する可能性がある点もデメリットといえます。
★デメリット
公式書類は本名の使用が必須
役所や銀行での手続きの複雑化
起業後に結婚・離婚したら?
登記事項に記載された役員の氏が変わった場合は、必ず変更登記を行う必要があります。変更登記を怠ると「登記懈怠」となり、過料(罰金)が科されるリスクがあるため、要注意です。
さらに、会社法違反による信用低下、銀行・役所での手続き停滞といったリスクも生じます。
登記変更は法的義務ですので、確実に行うことが求められます。
あとから旧姓併記の手続きも可能
旧姓のみでの起業はできませんが、旧姓を併記することで信用維持や取引先の混乱回避といった効果を得ることができます。
また、すでに本名で登記している場合でも、あとから旧姓を併記する手続きは可能です。対応を検討する経営者の方は、専門家に相談することをおすすめします。
加陽 麻里布
司法書士法人永田町事務所 代表司法書士
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