最新鋭のCADが1台1,000万円もした時代、図面1枚の保存に一晩を費やすことも珍しくありませんでした。そんな不便さの中にあった「手描き」の習慣が、実は現代の複雑な建築工事を支える思考の原点だったのかもしれません。本記事では、木村浩之氏の著書『現代建築の美と機能性を実現する 生産設計と施工図の世界』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集して、新宿パークタワーという歴史的難工事の舞台裏を紐解きます。効率化が進む今だからこそ見直したい、ツールに頼りすぎない「伝えるための思考」と、超高層複合ビルならではの緻密な納まりの工夫について解説します。

複合用途ビルならではの難しさ

新宿パークタワーの施工図を難しくしたのは、この建物が超高層であっただけでなく、本格的な複合用途ビルの先駆けであったことにもよります。そのため複雑な納まりが多くなって施工の難易度が高まり、施工図の作成も非常に難しいものになりました。

 

それまでの建物は高層、超高層であっても用途は単一です。しかし、都心部での土地取得の難しさやさまざまなニーズの誕生を背景に、一棟のビルでありながらオフィスとホテルが同居したり、集合住宅が入ったり、映画館などの娯楽施設が入るなど、用途の異なるものが複合する建物が増えていきました。1993年に竣工した当時日本一の高さを誇った70階建ての横浜ランドマークタワーは、低層階に商業施設、中層階にオフィス、高層階にはホテルが入るという複合用途の超高層ビルです。新宿パークタワーもほぼ同時期の設計・施工の建物で(竣工は横浜ランドマークタワーの9カ月後) 、低層に商業施設、その上にオフィス、さらにホテルが入る複合用途の構成もランドマークタワーと同じでした。またいずれのホテル内にもプールやフィットネスジムが設けられています。

 

複合用途になることの難しさは平面計画のまったく異なるフロアが重なることです。オフィスは無柱の大空間が確保され、ホテルでは対照的にそれぞれに水まわりが備えられた小さな区画の部屋が並びます。エレベーターの数や配置も異なり、照明や空調、消防などの設備もまったく異なります。そのため特に難しくなるのが建物を縦に貫通する雨樋や給排水、ガス管などを収めたパイプスペース、ダクトスペース、エレベーターシャフトなどです。避難用の階段も同じ位置にはなりません。最上階の52階から単純に縦にまっすぐおろせるものはなく、用途が切り替わるフロアで複雑に曲がることになります。しかもプールまであります。

 

筆者が担当した3階から8階のテナントフロアも、下階はホテルエントランス、上はオフィスです。しかも内部には2層を貫いた天井高8mの巨大なイベントホールも備えられています。上から下りてきたパイプやダクトを同じ位置でそのまま下に下ろせない場所はいくらでもありました。では天井内をどのように這わせてどこにもっていくか、当然横になったりカーブがあったりすれば流れは悪くなります。非常に細かい検討と納まりの工夫が必要でした。

現代建築の美と機能性を実現する 生産設計と施工図の世界

現代建築の美と機能性を実現する 生産設計と施工図の世界

木村 浩之

幻冬舎メディアコンサルティング

どんなに優れた「設計図」も、実現するためには「施工図」が欠かせない! 数多くの有名建築の生産設計を手掛けてきた第一人者が施工図の役割と魅力を実例とともに語り尽くす! 建物の図面と聞いてまず思い浮かべるのは「…

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