税務調査当日、想定外の質問
当日、調査官から質問が投げかけられました。
「〇〇年に不動産を購入されていますが、このときの売買契約書を見せていただけますか」「はい。こちらにあります」
もちろん、売買契約書もしっかり作成し、登記も滞りなく済ませています。Aさんはサッと書類を提示しました。書類の保管状況も完璧で、このまま問題なく終わるだろう――そう思った矢先のことです。
契約書を確認した調査官の口から、予想だにしない言葉が出ました。
「この金額の根拠は、どのようにして決められましたか?」
Aさんは戸惑いました。
(根拠……? そんなものは書類として用意していないし、なんと答えたらいいのか……)
実のところ、はっきりとした理由はなく、「自分の思う金額」に設定していました。個人の譲渡所得税が高くなるのは避けたかったため、「少しでも低くできたら」という気持ちで決めた金額だったのです。
言葉に詰まり、なにも答えられないAさんに対し、調査官は淡々と、しかし衝撃的な指摘を続けました。
「不動産の売買は、当然『時価』で行わなければなりません」
Aさんは茫然と立ち尽くしました。調査官の指摘内容は、Aさんにとって寝耳に水の話だったのです。
(そんな話、聞いたこともないぞ?)
調査官のいっていることがよくわかりませんでした。
独断の「価格設定」が招いたダブルパンチ
Aさんが設定した売却価格は、相場よりもはるかに低いものでした。不動産価格が年々上昇を続けているなか、調査官の目からみれば、明らかに相場の半分以下という低価格だったのです。
このように、時価より著しく低い価格で売却した場合、どのような事態になるか。実は、売主(個人)と買主(法人)の双方にダブルパンチが降りかかります。
・売主(個人):実際の売却額ではなく、時価相当額で売却したものとみなされ、本来支払うべきだった時価ベースでの譲渡所得税が課税されます。
・買主(法人):時価と実際の売買価格との差額分だけ安く購入できたとみなされます。この差額は受贈益として扱われ、法人税の課税対象となります。
「それはいったい、どういうことですか?」そう声を発するのがやっとのことで、それ以上、反論をする気持ちにもなれませんでした。
節税のために行ったはずの法人化。結果は散々なものでした。過去に遡って修正申告を求められ、延滞税などのペナルティも加算。当然、資金繰りは悪化してしまいました。
見聞きした知識をもとに、自己流で進めてしまうと思ってもみない落とし穴にはまることがあります。特に、法人化に伴う取引は、不動産の価格設定の妥当性が厳しく問われるポイントです。なにか気になることや不安なことがあれば、専門家に相談するという選択肢も視野に入れ、安心・安全な不動産経営を目指していきましょう。
木戸 真智子
税理士事務所エールパートナー
税理士/行政書士/ファイナンシャルプランナー
調査官は重加算税をかけたがる
相続税の「税務調査」の実態と対処方法
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