「子ども中心」で選んだはずの家
「今思えば、家も地域も“子どものため”ばかりに偏りすぎていたのかもしれません」
そう振り返るのは、郊外に移住した田中さゆりさん(仮名・38歳)。夫(42歳)と4歳・6歳の子どもと暮らす4人家族です。世帯年収は約1,280万円。夫婦共働きで、子どもが生まれる前は都内の分譲マンションで生活していました。
「上の子が保育園に入った頃から、騒音とかスペースの狭さが気になり始めたんです。もう少し広い家で、のびのび子育てがしたい。そう考えて、思い切って移住を決めました」
新居は新興住宅地に建てた庭付き一戸建て。子どもが走り回れる広さがあり、学区も評判のいい地域を選びました。
移住当初は、想像していた通りのゆったりした生活がありました。朝は庭で子どもと遊び、休日は近くの公園や自然の多い場所でピクニック。保育園もすぐに見つかり、近所づきあいも悪くなかったと言います。
ところが1年、2年と経つうちに、思いがけない“ズレ”を感じ始めたといいます。
「夫の通勤時間が片道90分以上かかるようになって、子育てや家事の負担が一気に私に偏ったんです。今までは“共働きでも協力できていた”のに、気づいたら私ひとりで背負っていました」
また、保育園の送迎や通院、買い物に車が必須になったことも想定外でした。以前は徒歩や電車で完結していた日常の移動が、今では「車が運転できないと生活できない」環境に。
「“子ども中心”で家を決めたことで、自分の時間や働き方を犠牲にしてしまった気がします。でも、それって本当に家族全体にとってベストだったのかな、と」
