「月6万円」を送り続けて10年
「母に頼まれたわけではなかったんです。ただ、“年金だけじゃ心細いだろう”と思って、自分から言い出しました」
そう語るのは、都内に住む会社員・田島徹さん(仮名・55歳)。10年前に父親を亡くして以来、地方で一人暮らしをしていた母(享年82)に、毎月6万円の仕送りを続けていました。
母は市営住宅の一室で質素に暮らし、「これで足りるから」と言いながらも、毎月きちんと通帳を記帳し、お礼の電話を欠かさなかったそうです。
「『これがあるから安心して暮らせるよ』って、毎回言ってくれていました。年金は月に12万くらいで、そこに私の仕送り。贅沢ではないけど、何とか暮らしていると思っていました」
しかし、その「安心」は、ある意味“思い込み”だったのかもしれません。母が体調を崩して入院したのは、昨年の秋のこと。急変し、そのまま亡くなってしまいました。
「バタバタと葬儀を終えたあと、母の遺品を整理していて、古い箪笥の引き出しから小さな手紙と封筒を見つけました」
便箋には、丁寧な筆致でこう書かれていました。
「徹へ
長い間、毎月ありがとう。とても助かりました。でも、全部使ってはいないの。もしよければ、これ、使ってくれる? お母さんより」
中には、現金が入った封筒が数通。さらに押入れの奥から出てきた金庫には、通帳が複数冊。そこには“仕送りの大半”が、そのまま貯金されていた形跡がありました。
母が残していたのは、3つの銀行の通帳。それぞれの口座には、仕送りがそのまま振り込まれ、ほとんど引き出されていないまま、長年積み重ねられていました。
「最初は信じられませんでした。あれだけ“助かってる”と言っていたのに……結局、仕送りのほとんどを使っていなかったんです」
合計すると、1,100万円を超える預金が残されていました。さらに、タンス預金らしき現金が数十万円分見つかり、徹さんは困惑します。
「もしかしたら、何かあったときのために…と思っていたのかもしれません。でも、それなら正直に言ってくれればよかったのに、という思いもあって……」
