「ちょっと、話があるんだ」
「定年までよく頑張ってくれたと思っていました。やっと一息つけるって――そう思っていたのに」
そう語るのは、横浜市に住む主婦・鈴木恵子さん(仮名・65歳)。長年、専業主婦として家庭を支え、夫・浩一さん(仮名・68歳)の定年退職をきっかけに、ようやく“自分の時間”を楽しめるはずだったと言います。
しかし退職からわずか数週間後、恵子さんは夫から“ある言葉”を告げられます。
「ちょっと、話があるんだ。これからの人生、別々に歩んだ方がいいと思ってる」
まるで“退職報告”のような淡々とした口調で、浩一さんは“離婚”を口にしたのです。
「耳を疑いました。ケンカが多いわけでもなかったし、何より“最後のお願い”って言われたのが辛くて」
夫の主張は、“もう人に気を遣わずに生きたい”というものでした。長年の会社生活と家庭生活に区切りをつけて、“自分だけの人生”を取り戻したい――その言葉には迷いがなかったといいます。
「退職金も2,000万円出て、夫婦の年金は合わせて月20万円ほど。持ち家でローンもなく、これからはゆっくり旅行でもと思っていたのに」
恵子さんの中で、「これまで尽くしてきたこと」が音を立てて崩れていくような感覚だったといいます。
「通帳を見て、さらに衝撃を受けました。生活口座も貯蓄も、全部夫の単独名義。私は“家庭のお金”だと思っていたけど、違ったんです」
夫婦の財産は「共有」と考えられがちですが、実際には名義や収入源によって取り扱いが異なります。離婚時の財産分与についても、婚姻期間中に築かれた財産が対象であり、名義がどちらであっても共有財産とみなされるケースが多いとはいえ、請求には知識と手続きが必要です。
「老後のお金は2人で使うものと思っていました。私が節約してきた分も、全部“彼のお金”扱いなんて…」
