経済的に恵まれ、快適なシニアライフを謳歌していた70歳妹…母の死で二十数年ぶりの実家帰省。「お前の遺産はない」と言い放つ兄に、弁護士を雇って遺留分請求した“お金以外の目的”

経済的に恵まれ、快適なシニアライフを謳歌していた70歳妹…母の死で二十数年ぶりの実家帰省。「お前の遺産はない」と言い放つ兄に、弁護士を雇って遺留分請求した“お金以外の目的”
(※写真はイメージです/PIXTA)

「法律上、きょうだいの遺産分割割合は2分の1ずつ」。そう民法に書いてあっても、現実は教科書通りにはいきません。特に、遺産が実家の不動産のみで、どちらかがそこに住んでいる場合や、長年疎遠だったきょうだいが再会した場合、理屈では割り切れない「感情」が衝突します。日経マネー(編)の書籍『絶対に避けたい!損する相続実例25』(日経BP)より、Cさんの事例とともに、こじれた相続のリアルを解説します。

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財産の1割で調停は合意するも…

最初の面談で弁護士から落としどころを聞かれたCさんは、「とにかく兄に一泡吹かせたい。結果も費用もこだわらない。すべてお任せする」と伝えた。

 

弁護士に依頼してから1週間後、兄は烈火のごとく怒ってCさんに電話をかけてきて、「店を継いだワシが実家を相続するのは当然だ。おまえは18歳で家を出ていったきり。母親の面倒もワシの嫁が見た。財産を半分寄こせなど、どの口が言うか」とまくし立てた。

 

「弁護士に任せているから」と怒声を無視して電話を切ると、時を置かず弁護士からも電話がかかってきた。「法律通り半分ずつ分割と主張したのですが、お兄さんは100%自分が相続という主張を曲げません。もう少し頑張ってみます」。そう言って弁護士は電話を切った。

 

時が流れ、月1回開催の調停の5回目が終わった後、弁護士から連絡が入った。「譲歩しまくって、お兄さんが300万円を支払うという内容で合意できそうです」

 

当初、結果はどうでもよいと考えていたCさんだが、調停での兄の振る舞いや言い分を聞かされるうち、気分は闘争モードに切り替わっていた。夫も「3000万円の半分なら1500万円だろ。まだ和解しなくてもいいんじゃないか?」とたきつけてきた。

 

Cさんが「300万円では負けじゃないですか」と伝えると、弁護士からは「確かにまだ粘れます。ただ、目的は意趣返しだったはずです。お兄さんは十分嫌な思いをしています。この後は恐らく審判、そして訴訟でしょう。あと数年かかりますが、それでもやりますか?」と重ねて問われた。

 

弁護士の言葉で我に返ったCさんは、目的は果たしたと納得。合意案を受け入れることにした。

【解説】遺産の相続権があっても簡単に手に入るとは限らない

ADVISER:インテグラル法律事務所

弁護士

長家 広明さん

 

民法では遺産の相続割合を定めています。このケースでは遺産の半分はCさんに相続する権利があります。ただ、法的に権利があると言っても簡単に受け取れるかどうかは別の話です。

 

お兄さんもCさんも主張を曲げないと、遺産分割調停は不成立となり、遺産分割審判に移行します。審判となれば主張をまとめた追加資料の提出が求められることがあります。数回の審判期日には当事者の出頭も必要です。

 

遺産が不動産だけのこのケースでは「実家は法定相続分通り、兄と妹で半分ずつの共有にしなさい」という審判が出るでしょう。ここまで1〜2年はかかります。

 

お兄さんが態度を変えず、Cさんが自分の相続分相当の現金を手にしようとするなら、次は「共有物分割請求調停」を申し立てます。「実家を売却して代金を兄妹で分けなさい」など、共有状態の解消方法を裁判所に決めてもらう調停です。調停が不成立なら「共有物分割請求訴訟」です。

 

最終的に競売を命じるような判決が出れば、お兄さんも逆らえません。ただ、競売では市場価格より安くしか売れませんし、判決までにはさらに1〜2年かかるでしょう。

 

お兄さんの旧態依然たる考え方は困ったものですが、そもそもはお父さんが亡くなった時にCさんと話し合って実家の名義を変えておくべきでした。一方、何十年も実家に寄り付かなかったCさんが「あいつは何も要らないだろう」と勘違いされるのは無理からぬところ。たまには実家に顔を出しておけば良かったかもしれません。

 

色々法律はありますが、円滑な相続に欠かせないのはやはり相続人同士の良好な関係です。

 

 

日経マネー(編)

 

 

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※本連載は、日経マネー(編)の書籍『絶対に避けたい!損する相続実例25』(日経BP)より一部を抜粋・再編集したものです。

絶対に避けたい!損する相続実例25

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