「少しでも足しになれば」と続けた仕送りだが…
都内で働く会社員の山本直人さん(仮名・53歳)。父・隆一さん(仮名・78歳)は地方都市で一人暮らし。母は10年前に他界し、以降は年金を頼りに慎ましく生活していました。
「年金だけだと心もとないだろうと思って、月3万5,000円を送っていました。多くはないけど、食費や光熱費の足しになれば、と」
父はいつも電話口でこう言っていました。
「ありがとうな。でも無理するな。こっちは何とかなってる」
異変を感じたのは、ある冬の朝でした。父から届いたメッセージは、たった一言。
「もう大丈夫だから」
直人さんが電話をかけ直しても、つながりません。その数日後、父は自宅で亡くなっているのが見つかりました。死因は持病によるものでした。
葬儀を終え、実家の片付けをしていたときのことです。物置の奥、使われていない古い収納箱の中から、封筒に入った現金が次々と出てきました。
「最初は数十万円かと思いました。でも、数えてみたら……」
封筒は十数通。合計すると、現金は200万円近くにのぼっていました。
「正直、頭が真っ白になりました。仕送りしていた意味は何だったんだろう、と」
通帳を確認すると、直人さんが送った仕送りは、ほとんど引き出されていませんでした。父は、受け取ったお金をそのまま現金で下ろし、手をつけずに保管していたのです。
「父は“助かるよ”とは言っていましたし、必要な分に使っているものだと思っていました。まさか、ほとんど手をつけていなかったなんて……」
厚生労働省『国民生活基礎調査(2023年)』によると、高齢者世帯の約55%が「生活が苦しい」と感じていると回答しています。一方で、実際には支出を極端に切り詰め、「使わないことで乗り切ろうとする」高齢者も少なくありません。
